JR西日本が来春にも、京阪神エリアの運賃体系を統一することを検討していることが、本日各マスコミで一斉に報じられました。
下記にてその一部をご紹介します。

JR西日本 来年春に京阪神エリアなどの運賃体系を統一へ調整|NHK 関西のニュース
JR西日本は、国鉄時代の運賃体系によって同じ距離でも運賃に差が出るケースがあることを踏まえ、来年春に、京阪神エリアなどで運賃体系を統一する方向で調整を進めていることが関係者への取材で分かりました。
これによって宝塚線などの一部の区間では運賃が引き下げられる一方、大阪環状線などでは引き上げられる見通しです。
(上記記事より引用)


JR西日本 来春にも“運賃体系を距離に応じたものに統一”の方向で調整 大阪環状線など都市部の一部区間で運賃が高くなるか | MBSニュース
 JR西日本が来年の春にも、運賃体系を距離に応じたものに統一する方向で調整していることがわかりました。大阪環状線などで運賃が高くなる可能性があります。

 JR西日本は原則、距離に応じた運賃体系をとっていますが、利用者が多い京阪神の都市部(一部区間)については、運賃が抑えられるなど、同じ距離でも運賃に差が出るケースがありました。

 一部区間で国鉄時代の運賃体系が残っているためで、関係者によりますと、JR西日本は、こうした運賃のばらつきに課題があるとして、来年春にも、運賃体系を統一する方向で調整しているということです。

 見直されれば、大阪環状線・京都線・神戸線など都市部の一部区間では運賃が高くなる一方、郊外では安くなる区間もあるとみられます。
(上記記事より引用>)


各種報道によりますと、概要は以下のとおりとみられます。
・国鉄時代から引き継がれてきた京阪神エリアの運賃体系について、来年春に見直す方向で調整中。
・現在は、都市部の区間では運賃が安い設定である一方、郊外の区間では高めの設定となっている。
・郊外の区間でも利用者が増えていることから、運賃を見直すこととしている。
・大阪環状線やJR京都線などでは運賃が上がり、JR宝塚線や琵琶湖線などでは運賃が下がる見通し。




JR西日本では、各種バリアフリー設備の整備を加速させることを目的に、2023年4月から「鉄道駅バリアフリー料金制度」を導入し、現在京阪神エリア内の「電車特定区間」及び「大阪環状線内」の各運賃エリアの区間内利用に際し、1乗車10円のバリアフリー料金を設定しています。
(参考)

この発表では、2025年春を目途に、その対象区間の拡大を検討していますが、その際整備対象エリアの運賃体系の共通化が課題、とされ、今後の検討を進めることが同時に発表されていました。

ここで、現在のJR西日本・近畿エリアの運賃体系を確認してみたいと思います。
国土交通省の「交通政策審議会」の中の「鉄道運賃・料金制度のあり方に関する小委員会」の第2回小委員会において、JR西日本から、現在の運賃区分についての資料が掲載されていましたので、こちらを引用してみます。
2024042220-48-076
(上記小委員会Webサイト(https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/content/001466287.pdf)より引用)

即ち、このエリアでは「大阪環状線内」「電車特定区間」「幹線」「地方交通線」という4つの運賃区分が混在しているのですが、これらは国鉄時代から引き継がれた区分となっているため、現状の輸送サービスレベルと乖離が出てきている区間も存在しています。

例えば、現在「幹線」の運賃区分となっている「JR宝塚線」でみますと、新三田、宝塚、伊丹の各駅では国鉄時代に比べ約5倍〜27倍に利用者が増加し、「電車特定区間」の阪和線や大和路線と遜色ない輸送サービスが提供できるまでとなっています。

また、国鉄時代は大阪環状線の利用者が多く高収益であったことから、別立ての運賃体系とする理由もあったかと思われます。

しかし、今やその他のJR線の利用者も増加していること、また阪和線・大和路線と大阪環状線との直通列車も国鉄時代と比べると激増しており、もはやこれら3線区が一体の輸送体系を構築しているものと考えても支障ないレベルにまで発展してきたことは紛れもない事実であります。

加えて、現在「電車特定区間」のみで実施している「鉄道駅バリアフリー料金制度」を、現在の「幹線」エリアに広げると、バリアフリー料金加算のエリアと幹線のエリアが異なることから、距離が遠いはずのバリアフリー料金エリア外の方が運賃が安くなる現象が生じることが懸念されています。
2024042220-48-218
(上記小委員会Webサイト(https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/content/001466287.pdf)より引用)


以上に掲げた現状との乖離や矛盾を解消するため、JR西日本では同小委員会において、京阪神エリアの運賃区分の変更を行いたい旨、意見として表明しています。

今回の報道は、ここで示されていた「京阪神エリアの運賃区分」を、「鉄道駅バリアフリー料金制度」の拡大に合わせて実施する、というものと考えられます。



本日の報道記事や上記小委員会でのJR西日本の意見などから考察すると、来年(2025年)春の運賃見直しにおいて、下記の制度改正を行うものと考えられます。
・「大阪環状線内」運賃の廃止し、「電車特定区間」へ移行
・「電車特定区間」を「鉄道駅バリアフリー料金制度」拡大実施エリアへ適用
・「電車特定区間」運賃を値上げ
(参考)
2024042221-37-301
(JR西日本発表資料(https://www.westjr.co.jp/press/article/items/220819_00_bariahuriryoukin.pdf)より引用)

気になるのは、既存の「電車特定区間」「大阪環状線内」の値上げ幅ですが、NHKの報道によると「変動幅は十円から数十円程度」(上記引用)と記されているように、大幅な変動はない見込みです。
具体的な額がいくらなのかは、全く分かりませんが、恐らく「現行の電車特定区間」と「現行の幹線」の間の水準に落ち着くのではないか、と推測されます。

それでも「値上げ」というネガティブに捉えられる制度改正を、どのように利用者に理解を求めていくのか、引き続き見ていきたいと思います。



上述のように、仮に「電車特定区間」が現行より値上げとなれば、私も利用している「阪和線」も「電車特定区間」となるため、値上げの対象となります。
一方で、現在「幹線」となっている「関西空港線」も「電車特定区間」に組み込まれることにより、各方面から関西空港への運賃が値下げとなることが期待されます。

JR西日本では、これまで自社内の運賃については、価格の変動はあったものの、大きな制度改正はこれまでありませんでした。
しかし2025年春に、上述のとおり大きな改革が実施されることとなりそうです。

その様子を目の当たりにすることになりそうなので、当ブログでもこの話題をしっかりご紹介していきたいと思っています。

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▲阪和線・山中渓に到着する紀州路快速。
ここ阪和線は全線が「電車特定区間」として、琵琶湖線やJR宝塚線の「幹線」よりも割安な運賃が適用されてきました。
しかし来春にも予定されている運賃制度改正での値上げが予想されます。




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