JR西日本では、国鉄時代から基本的に継承してきた京阪神都市圏の運賃体系について、同社発足後の輸送改善等による利用状況の変化を踏まえ、京阪神都市圏内で同じレベルの輸送サービスを提供しているエリアにおいて運賃体系を統合することとし、本日(5月15日(水))、普通運賃等の上限変更について国土交通大臣に認可申請したことを発表しました。

京阪神都市圏における運賃体系の見直しについて:JR西日本

概要は以下のとおりです。

【申請内容】
・現在の「大阪附近の電車特定区間」(以下、「電車特定区間」という。)を見直し、新たに京阪神都市圏を適用エリアとする共通の運賃水準を設定。

【適用区間】
・現行の電車特定区間を拡大するとともに、電車特定区間のうち「大阪環状線内」の区分を廃止。
2024051520-50-441
(上記発表資料(https://www.westjr.co.jp/press/article/items/240515_00_press_keihanshin_unchin.pdf)より引用)

【改定運賃】
申請運賃に鉄道駅バリアフリー料金を加算した運賃表は以下のとおり。
2024051520-51-154
(上記発表資料(https://www.westjr.co.jp/press/article/items/240515_00_press_keihanshin_unchin.pdf)より引用)

【届出により設定する運賃・料金】
・並行する鉄道事業者との競合区間に設定している、上限運賃より安価な特定の運賃は、基本的に変更せず。
但し、上限運賃の変更に伴い運賃を特定する区間や、新たに鉄道駅バリアフリー料金の収受対象となる区間等、一部変更となる区間が存在。

【改定時期】
2025年4月1日(火)発売分から

【主な区間の運賃(大人)】
・大阪〜天王寺(10.7km)
現行(大阪環状線内):210円
改定(電車特定区間):240円(+30円)

・大阪〜和歌山(72.0km)
現行(電車特定区間):1,280円
改定(電車特定区間):1,300円(+20円)

・大阪〜姫路(87.9km)
現行(幹線):1,520円
改定(電車特定区間):1,460円(▲60円)

・大阪〜関西空港(56.7km)
現行(幹線):1,210円(※)
改定(電車特定区間):1,180円(※)(▲30円)
(※)日根野〜関西空港間の加算運賃(220円)は改定されないものとして算出


詳細は、上記発表資料をご覧下さい。



京阪神都市圏の運賃体系については、冒頭で記したように国鉄時代の体系を民営化後もずっと引き継いできました。
具体的には、「大阪環状線内」「電車特定区間」「幹線」「地方交通線」という4つの運賃区分を設け、輸送サービスレベル等に応じた運賃区分を設定・適用しているものです。

一方で、民営化以降の都市圏の拡大や、それに対応する輸送改善(電化、複線化、増発)等により、国鉄時代と現在とでは、その輸送サービスレベルが大きく乖離している線区も存在しています。

一例を挙げますと、JR宝塚線(尼崎〜新三田)や嵯峨野線(京都〜亀岡)等で、これらの線区では、国鉄時代末期とは比べものにならないくらいの列車の増発が行われており、現在では阪和線や大和路線等、国鉄時代からの「電車特定区間」と遜色ないレベルのサービスが提供されています。

これに加え、JR西日本で2023年4月から導入している「鉄道駅バリアフリー料金」について、現在の「大阪環状線内」「電車特定区間」の各運賃エリアから現在の「幹線」エリアの一部に拡大する際、鉄道駅バリアフリー料金運賃加算対象エリアの内外で、運賃の逆転現象が起こることも生じます。


これら、国鉄時代から引き継いできた運賃制度では対応しきれなくなった点を解消し、シンプルな運賃体系とするのが、今回の改定の趣旨といえます。

改定の概要としては、
・「電車特定区間」を「鉄道駅バリアフリー料金制度」拡大実施エリアへ拡大
・「大阪環状線内運賃」を廃止
・新たな「電車特定区間」の運賃は、現行の「大阪環状線内」「電車特定区間」より値上げ、現行の「幹線」より値下げ

となり、下記の過去記事で私が予想した内容と合致していることが分かります。
(参考)


気になる改定幅ですが、主な区間の運賃を記していますが、現行の「大阪環状線内」では+10円〜+30円、現行の「電車特定区間」では0円〜+20円、現行の「幹線」では0円〜▲210円(鉄道駅バリアフリー料金を含む改定幅)となっています。

値上げとなる区間でも数十円となりますが、一方で上記で例示した大阪〜天王寺の場合ですと30円(約14%)の値上げとなることから、影響を受ける利用者も一定数存在しているのは確かです。

一方で、同じく例示した大阪〜姫路の場合は、60円の値下げですが、これは鉄道駅バリアフリー料金の10円の加算を含んだ変動額なので、バリアフリー料金を除くと70円の値下げとなっており、新たに電車特定区間となったエリアの利用者は、今回の改定の恩恵を受ける立場となります。

ともあれ、今回の改定がJR西日本の増収ではなく、運賃体系の平準化を目的としていることから、このような差が生じるのは仕方がないところといえます。


新しい運賃体系の実施は2025年4月1日からとなりますので、今後の運賃改定の周知についても、駅等でこまめにウォッチしていきたいな、と思っています。



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▲阪和線・山中渓駅(電車特定区間)に到着する225系。
山中渓〜和歌山(16.1km)の運賃は、現行の320円から変更ありません。


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▲関西空港線・りんくうタウン駅(幹線)に停車中の223系。
りんくうタウン〜天王寺(39.1km)の運賃は、現行の840円(加算運賃160円含む)から820円(同)と20円の値下げとなります。


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▲桃谷駅(大阪環状線内)に到着する323系「スーパー・ニンテンドー・ワールド」ラッピング編成。
桃谷〜天王寺(2.2km)の運賃は、現行の140円から150円と10円の値上げとなります。




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