JR東日本や東武鉄道などの鉄道事業者8社(※)(以下、「鉄道8社」)では、磁気乗車券からQRコードを使用した乗車券(以下、「QR乗車券」)への置き換えを順次実施することを発表しました。
(※)京成電鉄、京浜急行電鉄、新京成電鉄、西武鉄道、東京モノレール、東武鉄道、JR東日本、北総鉄道の8社。

鉄道事業者8社による磁気乗車券からQRコードを使用した乗車券への置き換えについて|JR東日本
鉄道事業者 8 社による磁気乗車券から QR コードを使用した乗車券への置き換えについて |東武鉄道

概要は以下のとおりです。

【QR乗車券への置き換え目的】
・持続可能なシステムへの移行
(磁気乗車券用の機構の煩雑さ、鉄道固有の専門性の高さから、中長期的に維持していくために、持続可能なシステムへ移行。)

・より環境にやさしい用紙への置き換え
(磁気乗車券の用紙は金属を含んでいるため、リサイクルにあたり磁気層の分離・廃棄が必要であり、一定の環境負荷を与えている。QR乗車券では、よりリサイクルが容易な用紙に変更可能・)

・利用者サービスの向上
(機器の不具合による券詰まりなど、利用者に不便を与える状況が発生している。非接触による処理が可能なQR乗車券により、メンテナンス性の向上や故障率の低減を図る。)

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(上記発表資料(https://www.tobu.co.jp/cms-pdf/releases/202405291150160CBBRsoa38jKVbdWopmmKA.pdf)より引用)


【QR乗車券の概要】
●対象:
自動券売機から発見する普通乗車券(近距離券)をQR乗車券に置き換え。
その他詳細については、決定次第発表。

●利用方法:
磁気乗車券を出改札機器へ投入する方式から、QR乗車券のQRコードを出改札機器のQRリーダーにタッチする方法へ変更。
2024052920-44-472
(上記発表資料(https://www.tobu.co.jp/cms-pdf/releases/202405291150160CBBRsoa38jKVbdWopmmKA.pdf)より引用)


【システム】
鉄道8社共用のQR乗車券管理サーバーで管理。
8社が同一のシステムを使用することで、会社間にまたがるQR乗車券の発券が可能。
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(上記発表資料(https://www.tobu.co.jp/cms-pdf/releases/202405291150160CBBRsoa38jKVbdWopmmKA.pdf)より引用)

【サービス開始時期】
2026年度末以降、順次実施予定


詳細は、上記発表資料をご覧下さい。



これまでの磁気乗車券に替わって、地方鉄道事業者での導入事例も既にある「QR乗車券」ですが、近年、JR各社や大手民鉄などで、導入を進めていく動きが出てきています。

ここ関西地区では、大手民鉄事業者等で構成する「スルッとKANSAI協議会」が、QRコードを活用したデジタル乗車券サービスの開始を、またJR西日本が周遊券等のQRチケットのサービスを開始することを発表しています。
(参考)




一方、東日本地区の鉄道事業者を見てみますと、JR東日本では2024年下期にQRコードを使用した新たな乗車サービス導入を発表しているほか、東武鉄道では2024年度までの4カ年を期間とする「中期経営計画2024〜2027」において、QR乗車券の導入による磁気乗車券の全廃を発表しています。
(参考)




このように、QR乗車券の仕組みが徐々に導入されていくなか、現在発売されている磁気乗車券をどのように扱っていくのか気になっていましたが、今回発表のあった8社では、2026年度末以降に現在の磁気乗車券をQR乗車券に置き換えていくことが発表されました。


思えば、磁気乗車券を使用した自動改札機は、ここ関西の阪急電鉄が嚆矢だったかと記憶しており、その後、1980年代にかけて関西地区の鉄道事業者を中心に普及が広がりました。
1990年代に入ると、これまで磁気乗車券の導入が進まなかったJR各社や首都圏の鉄道事業者でも導入が進み、大都市圏では当たり前のように磁気乗車券が利用されたのが、1990年代後半から2000年代にかけてでしょうか。

その後、交通系ICカードの普及により、磁気乗車券の利用割合は減少していき、現在では1割にも満たなくなりました。
将来的にこの磁気乗車券をどうしていくのか、というのは、新たにQRコードの技術が普及してきたこともあって、個人的に気になっていましたが、今回首都圏の8社では、磁気乗車券を廃止していくという、思い切った方向性が示されることとなりました。


今後、どのようなスケジュールで磁気乗車券をQR乗車券に置き換えていくか、また普通乗車券以外のきっぷをどのようにQR乗車券に対応させていくのか等、詳細は気になるところです。
ともあれ、技術の進化により、きっぷの形も変化していくことを、リアルタイムで体験していくことになりそうですので、その様子を逐次このブログでもご紹介していければと思っています。




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