このブログでは気になる鉄道雑誌・書籍を管理人が実際に読んだ上で、感想などを書いています。
今回ご紹介する鉄道雑誌はこちらです。
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鉄道ピクトリアル 2024年 8月号 [雑誌]
鉄道ピクトリアル 2024年 8月号 [雑誌]



鉄道ピクトリアル2024年8月号。
特集は「近畿日本鉄道(近鉄)南大阪・吉野線」です。

鉄道ピクトリアルの近鉄特集としては、2018年12月臨時増刊号で「近畿日本鉄道」、2021年9月臨時増刊号で「近鉄特急」が発行されています。
(参考)



一方、民鉄全国一の路線規模を誇る近鉄では、これらの全社的な特集だけではどうしてもカバーしきれない部分がありますが、今回の特異臭では、そういった補完を含めて企画されたもの、とのことです。
その「補完」ともいうべき第一回目が、この「南大阪・吉野線」です。


既にご存じの方も多いように、近鉄南大阪・吉野線は、他の近鉄各線とは線路幅が異なることから、これらの2路線に道明寺線、御所線、長野線の5線を運営する組織として、「天王寺営業局」が長らく設けられていました(2023年6月まで)。

歴史的経緯についても、現在の大阪線及び橿原線とは異なり、現在のJR大和路線・柏原駅から河内長野までを結ぶことを目的に開業した「河陽鉄道」(のちの「河南鉄道」)、河南鉄道から東西に分かれて大阪阿部野橋〜橿原神宮前を結んだ「大阪鉄道」、吉野口でJR和歌山線と接続し吉野方面からの貨物輸送を目的に建設され、後に橿原神宮前まで延伸した「吉野鉄道」、そして大阪鉄道から分かれて御所へ、そしてその先五条までの延伸計画もあった「南和電気鉄道」の5社を源流としています。
(注:路線名及び駅名は現在のものを表記しています。)


運行的にも、そして歴史的にも、他の近鉄各線とは独立した存在であるこの「南大阪・吉野線」ですので、他の近鉄各線とは違った面が色々あり、それを網羅した一冊が今回の特集、といえるでしょう。


個人的に今回の特集を購入して良かったと感じたのは、「橿原神宮前」駅にまつわる歴史的経緯の整理です。
奈良県橿原市の橿原神宮は1890年(明治23年)に創建された神社で、その最寄り駅は当初畝傍駅(現在のJR桜井線)のみでしたが、その後現在の近鉄橿原線(当時は大阪電気軌道)、そして吉野線、南大阪線の順番に橿原神宮近辺まで路線網を延ばしてきました。

加えて、現在は廃止となりましたが、吉野線から桜井線へ接続する路線も建設され、またそこに軌間の違い(橿原線は標準軌、その他の各線は狭軌)や、1940(昭和15年)の橿原神宮拡張に伴う線路移設と橿原神宮総合駅(現在の橿原神宮前駅)の開業もあり、歴史的に複雑な経緯がありました。


今回の特集では、元近鉄社員の武部宏明氏の「大阪阿部野橋駅と橿原神宮前駅の変遷」の項で、この一連の橿原神宮前周辺の経緯が整理されており、意外と複雑な経緯をたどっていることなどが、分かりやすく解説されています。


近年は行けていないのですが、このブログでは毎年の撮り初めとして橿原神宮前駅周辺で近鉄南大阪線の列車を撮影してきています。
(参考)



それだけに、今回特集として「南大阪・吉野線」が単独で取り上げられていることに、嬉しく感じており、早速購入し、読破した次第です。

また特集記事内では、近鉄社員による「南大阪・吉野線の運転体系」と、本線区のダイヤの特徴、特に古市駅での連結・開放等についても、「中の人」による詳細も記されていますので、こちらも冒頭に記した別冊特集と同様、近鉄公式の記事として貴重なものといえます。

以上のように、近鉄南大阪・吉野線が詰まった一冊となった今回の鉄道ピクトリアル。
沿線ファンは勿論、近鉄自体に興味がある方も、狭軌の各線区の魅力を感じ取るという意味で、是非手元に置いておきたい一冊と感じました。


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▲南大阪線・橿原神宮西口〜橿原神宮前間で撮影した「ラビットカー」復刻塗装
(2016年1月2日撮影)
橿原神宮前近辺のお手軽撮影地でもあるこの場所で撮影した写真も、本特集に掲載されていました。
また南大阪・吉野線で撮影した様々な写真も掲載されているので、今後の記録撮影の際にも参考になると感じた特集でありました。