JR九州では、去る7月19日(金)に、同社線を利用する際の運賃・料金についての上限変更認可申請(値上げ)を国土交通大臣宛てに実施したことを発表しました。

運賃・料金改定の申請について|JR九州
鉄道旅客運賃・料金改定の認可申請のお知らせ|JR九州

概要は以下のとおりです。

【実施予定日】
2025年4月1日(火)

【申請理由】
・同社では、1996年1月以降、現在に至る28年の間、消費税率の引上げによるものを除き改定を
行わず、運賃を維持してきたが、高速道路網の発達や全国平均を上回る九州地区の人口減少・高齢化に加え、新しい生活様式の定着に伴う鉄道利用の更なる減少により、輸送需要はコロナ禍前の水準に戻らないと見込んでいる。
・また同社は、コロナ禍前から、固定費の削減や生産性向上に努めてきまたが、昨今の電気料金や
物価の高騰による経費の増加もあり、厳しい経営状況が継続する見込み。
・このような中、安全やサービスの維持向上、老朽化した車両・設備の更新や長寿命化、激甚化する
災害やカーボンニュートラル等に対応する設備投資や修繕等に必要な資金を安定的に確保すること
が困難となっており、また、働き手を安定的に確保すべく、待遇や職場環境の改善を図ることが
急務。
・ついては、当社のさらなる経営努力を前提として、今後も事業継続に必要な対応を着実に実施するにあたり、不足する費用の一部について利用者に負担をお願いするため、改定を申請したもの。

【申請内容】
普通旅客運賃、定期旅客運賃(通勤・通学)、新幹線特急料金

【改定率】
●運賃、料金全体で15.0%の改定
●普通旅客運賃:
・平均14.6%の改定
・初乗り運賃・・・現行170円⇒申請200円

●定期旅客運賃:
・通勤定期は平均30.3%、通学定期は平均16.0%の改定を申請
・通勤定期は割引率を見直し
(例:1ヶ月・・・現行51.7%⇒改定46.7%)

●新幹線特急料金:
・平均12.4%の改定を申請
・一部の隣接駅間等での自由席を利用する場合の特急料金は据え置き
・西九州新幹線の特急料金は据え置き

●その他:
在来線特急料金、グリーン料金及び座席指定料金は据え置き

【今後の設備投資計画】
・鉄道施設の長寿命化・・・2024年度〜2027年度 約75億円
次世代車両の新製・・・2024年度〜2030年度 約125億円
既存車両の改造・・・2024年度〜2030年度 約110億円
・次世代車両検査施設の整備・・・2024年度〜2031年度 約480億円
・チケットレスサービスの導入・拡大・・・2024年度〜2027年度 約30億円

詳細は、上記発表資料をご覧下さい。



コロナ禍後、既に様々な鉄道事業者が、割引きっぷの縮小・価格見直しのみならず、上限運賃の値上げを実施しており、JRグループでもJR北海道やJR四国で、運賃の値上げが実施されています。
(JR北海道はコロナ禍前の2019年10月に続き、2025年4月にも実施の予定です。)

そんな中、JR九州では、既に一部報道(下記過去記事参照)で、運賃値上げの報道がありましたが、今回正式に値上げ申請を実施した旨を発表しました。
(参考)


申請内容を見ますと、普通運賃は平均14.6%の値上げ、定期運賃は通勤定期の割引率引き下げを行う一方、通学定期は割引率は変更せず、新幹線特急料金についても、西九州新幹線は据え置きとなっており、一定のメリハリがあるように感じました。

また、今回の値上げを原資とし、車両の新製・改造や、チケットレスサービスの導入・拡大を図るとしており、ファン的には、車両の新製・改造が気になるところといえます。
同社発表の資料では、具体的な新製・改造の計画として、YC1系の導入推進や813系ロングシート化などが記されているので、こういった車両が今後お目見えしてくるものと考えられます。

一方、同社の資料では、「老朽化した車両及び鉄道施設の更新」として、415系の写真が掲載され、置き換え後のイメージとして821系やYC1系の写真が掲載されていることから、今後の置き換えのイメージも何となく連想できそうな感じであります。
現在415系は、主に下関〜小倉間で、交流・直流双方の区間が走れる線区で中心に運行されていますが、この区間の置き換えをYC1系で実施する、というのも考えられたりしそうにも感じました。

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▲JR九州415系。
2013年10月、佐賀駅で撮影しており、当時は西九州新幹線開業前のため、このように「長崎」の行先の列車も415系で運行されていました。
今回の運賃値上げを原資に、415系の置き換えも進められることが考えられます。


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▲キハ47形(唐津線)

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▲783系ハイパーサルーン(佐賀駅)
キハ47形は国鉄から継承した車両、そして783系は民営化後に導入された車両とはいえ、昭和63年から平成の初めにかけて導入されており、35年程度が経過しており、どちらも老朽化が進んでいる車両といえます。
今回の値上げを原資とした車両新製は、これらの車両の置き換えまでカバーしていくのかどうか、も気になるところであります。




一方で、先のJR九州値上げの報道を当ブログでも取り上げた際に触れましたが、値上げに際して「不正乗車対策」をしっかり実施していくのか、という点では、一般利用者としても毅然とした対応を求めたいところといえます。

通常、運賃改定申請の際には「パブリックコメント」が実施されますので、一般利用者としては、このような機会を活用して、不正乗車対策を遺漏なく行うよう、意見するのも一つの表明方法といえるでしょう。

パブリックコメントは、申請後の翌平日以降となるかと思われますので、パブコメ実施が発表されれば、当ブログでもご紹介したいと思います。



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