JR西日本では、本日(8月2日)、2023年度の区間別平均通過人員(輸送密度)を発表しました。

2023年度区間別平均通過人員(輸送密度)について:JR西日本

区間別のデータは、上記発表資料内に掲載されていますので、詳細はそちらをご覧いただくとして、気になる内容をご紹介しておきます。



【紀勢線・新宮〜白浜間】
当ブログ的に最も気にしている紀勢線・新宮〜白浜間は、935人(2022年度・793人)でした。
前年度に比べ約18%増加したものの、コロナ禍前の2019年度(1,085人)の86%と、まだコロナ禍前までに回復していない状況です。

今年度(2024年度)は、下記記事でご紹介した「世界遺産登録20周年」を記念したキャンペーンの実施やおトクなきっぷの発売など、そして来年(2025年)は大阪・関西万博の開催と、外国人にも人気の観光地を抱える本線区にとっては、コロナ禍前の水準回復とそれ以上の利用者増のチャンスとなる時期なだけに、今後の線区の活性化と利用実績の増加を期待したいところです。
(参考)



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▲特急「くろしお」287系「パンダくろしお」(紀伊日置〜周参見)




【山陰線・城崎温泉〜浜坂】
今回発表の資料をみてみますと、昨年5月の新型コロナウイルス5類相当への移行と、それに伴う観光や出張といった移動の回復も相まって、輸送密度も増加している線区も多く見られます。

一方で、輸送密度が横ばいであったり、中には減少している線区もあり、これらの線区はコロナ禍とはまた別の理由で利用者が回復しない現状があるものと考えられます。

資料を見てみて、最も気になったのは、山陰線の城崎温泉〜浜坂間です。
この線区では、2022年度の輸送密度が721人に対し、2023年度は574人と、20%も減少しています。
当線区は、沿線に城崎温泉や湯村温泉、餘部橋梁等の観光地を抱える線区でありますが、上述のとおり観光需要が回復していることや、下記記事でご紹介したように2023年3月ダイヤ改正で特急「はまかぜ」の運転区間を変更し、より観光客に使いやすいダイヤに変更したところです。
(参考)


このように、輸送密度が回復する条件が揃っているように思われますが、逆に2割もの減少となっています。
原因の一つとして、2022年7月から発売された「サイコロきっぷ」の目的地が餘部であったことから、2022年度は大幅な利用増があり、2023年度はその増加分が減少した、ということが考えられそうです。
(参考)


一方で、サイコロきっぷ発売前の2021年度の同区間における輸送密度は606人であり、2023年度はこれより減っていることとなります。
(参考)
2022年度区間別平均通過人員(輸送密度)について:JR西日本

上述のとおり、コロナ禍後以降、利用者が増える環境にあるにも関わらず、サイコロきっぷの影響を除いた前後2年間で増加でなく減少している、ということは、根本的な理由が何か別にあるのかも知れません。
利用促進や路線維持を図る沿線自治体等にとっては、そのあたりの分析をしっかり行い、対策を講じていく必要があると考えられます。
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▲大阪駅に停車中のキハ189系「はまかぜ」。
本列車が走る山陰線・城崎温泉〜浜坂間では、2023年度の輸送密度が前年度に比べ2割程度も減少しているだけでなく、2021年度よりも減少しています。




【芸備線・備中神代〜東城〜備後落合〜備後庄原】
現在、地域公共交通活性化法に基づき設置された「再構築協議会」の唯一の対象線区が芸備線の備中神代〜備後庄原間であります。
(参考)

昨年10月にJR西日本が同法に基づき再構築協議会設置を要請し、今年3月に第1回の再構築協議会が行われました。
(参考)
芸備線再構築協議会 | 広島県

昨年度終わりに設置されたばかりなので、協議会の議論と今回発表の結果とは関連性がありませんが、一方で上述のコロナ禍からの回復基調もみられる中、これら芸備線の線区では、下記のとおり輸送密度がほぼ横ばいとなっていました。
(線区別輸送密度(2022年度⇒2023年度)
・備中神代〜東城・・・89人⇒88人
・東城〜備後落合・・・20人⇒20人
・備後落合〜備後庄原・・・75人⇒86人

これほどの輸送密度の変化であるなら、これらの線区ではコロナ禍関係なく、非常に少ない地元の利用者の利用が固定化している、ということも想定されるでしょう。

今回発表のデータも、今後の芸備線の存廃の議論に繋がっていくことが大いに考えられることから、これらの動向も引き続き注目しておきたいと思います。



以上、とりとめも無くJR西日本の2023年度の線区別輸送密度をご紹介しました。
全般的には、コロナ禍からの回復が見られた一方で、そういった影響が利用に反映されていない線区もありました。
特に輸送密度2,000人未満の線区では、今後の路線の在り方を否が応でも考えないといけないだけに、沿線自治体や住民も、今回の発表をしっかり見つめて、線区の利用促進に取り組んでいくことを改めて認識しておかないといけないな、と感じたニュースでありました。



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