随分前に読了していたのですが、感想をブログに掲載しないまま2ヶ月を過ぎようとしていて、記憶もちょっと曖昧になってきたので、粗々でも書いておこうと思います。

「日本鉄道廃線史」という、中公新書の本を読んでみました。

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日本鉄道廃線史 消えた鉄路の跡を行く (中公新書 2810) [ 小牟田哲彦 ]
日本鉄道廃線史 消えた鉄路の跡を行く (中公新書 2810) [ 小牟田哲彦 ]




旅客輸送や貨物輸送といった、ある一定の目的のために建設された鉄道ですが、その後の事情の変化により廃線となってきましたが、その廃線を法規的に定義し、そして「戦時」「国鉄赤字83線」「国鉄再建法」「災害」といった、廃止となった主な要因別に、個別の事例も交えて分析し、そして昨今各地で議論となっている、沿線人口の減少等での利用者減により、持続可能な交通体系として、鉄道を維持することが妥当なのかどうか、という課題に結びつけています。


これまで様々な路線で廃止となりましたが、近年は利用者の減少による廃止が多い一方、かつては戦争による休廃止もありましたが、近年は激甚化する災害の影響により、復旧しても大量輸送を特性とする鉄道が、地域の公共交通機関としての役割を果たすことができるのかどうか、という観点から、廃止・代替バス及びBRT変換という方法も取られています。

ここ近年、JR各社(東海除く)では、各線区の輸送密度を公表し、また輸送密度が一定以下で自社単独での持続可能が厳しい線区については、その収支状況も公表しています。
これらの線区では、実際に利用者が少なく、バス転換を行った方が社会便益的にも良いのではないか、と思えるケースもあれば、ある一定の長距離移動手段としての役割を担っているケースもあることから、一概に廃止だの存続だのを断じることは難しいのではないか、と思います。

ただ、これまで過去に、鉄道路線がどのような経緯で、どのような手続きにより廃止となっていたのかは、今後の地域鉄道の動きを見ていく上で、しっかりと知っておくべきだと思いますし、その一助に本書はなるのではないか、と思います。


個人的な感想を記しますと、廃線に関する法規的分析及び過去の事例をまとめた第4章までの内容は、客観的な分析もあり、納得するところも多かったのですが、一方現在進行形で存廃の議論が進んでいる第5章及び第6章については、廃止に向かう線区の現状を憂う著者の心情が現れる箇所も見受けられたりと、地域交通の在り方を考える上では、若干フィルターが混ざっているようにも感じました。

最後の例で挙げられた「観光鉄道」についても、地域交通を維持する上で、鉄道を残すべきかどうか、という議論とは、相容れない部分があるかと感じていますので、観光鉄道を鉄道存続の事例として挙げているところには、個人的に違和感も覚えるのですが、ただ、廃線の定義と経緯を体系的に整理している、という点では、本書を一読する価値はあるのかな、と感じました。




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