「阪和線全駅データベース」で収集したデータを元に考察してみる「阪和線コラム」。
三回の今回は、「駅間距離」について見ていきます。



前回の阪和線コラム「開業の新しい駅・古い駅」で、阪和線で国鉄分割民営化以降、新しい駅が設置されていない理由の一つとして、「元々駅間距離が短く(山中渓〜紀伊間を除く)、新駅設置に適する区間が無かった」ことを挙げていたのを覚えておられますでしょうか。
(参考)


それならば「阪和線の駅間は平均どれくらいあるのか?」「最も長い駅間はどこか?短い駅間はどこか?」「近隣他線区と比べてどうなのか?」という疑問を解き明かしていこう、というのが本日の趣旨です。
(注)以下、各駅間距離はJTB時刻表記載の駅間を元に小数点第1位まで、平均駅間距離は小数点第2位(第3位以下切り捨て)で表記しています。




【阪和線の各駅間距離】
まず、阪和線全駅間の距離をみていきたいと思います。
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赤字の箇所は駅間が長い区間、緑地の箇所は駅間の短い区間となります。

阪和線の駅間距離は、全線通じて平均1.80kmとなっています(羽衣線含む)。

但しこれは、府県境を越えることから他に比べると長い「山中渓〜紀伊」(8.1km)を含んだ数値でありますので、大阪府内(天王寺〜山中渓)と和歌山県内(紀伊〜和歌山)で分けた平均駅間距離も計算しますと、大阪府内(天王寺〜山中渓)は平均1.51km、和歌山県内(紀伊〜和歌山)は2.66kmとなっています。

【駅間が長い区間、短い区間】
次に、駅間の長い区間、短い区間を見ていきます。

<駅間の長い区間>(長い順)
・山中渓〜紀伊(8.1km)
・紀伊〜六十谷(3.9km)
・和泉府中〜久米田、六十谷〜紀伊中ノ島(3.0km)
・和泉砂川〜和泉鳥取(2.8km)
・長滝〜新家(2.3km)
・東貝塚〜和泉橋本、熊取〜日根野、新家〜和泉砂川、和泉鳥取〜山中渓(1.9km)

やはり最長の駅間距離は、府県境をまたぐ山中渓〜紀伊間となるのは当然として、その次に続くのが、和歌山県内の紀伊・六十谷・紀伊中ノ島の各駅間というのも特徴でしょうか。

その一方で、大阪府内で最も駅間距離が長いのが「和泉府中〜久米田間」
以下にてGoogleマップの和泉府中〜久米田間とその周辺地図を掲載していますが、この区間だけ特段開発が広がっていないわけでは無いのですが、一方で新駅を設けるほどの人口や都市機能を有しているのか、と言われると微妙なところ、といえるでしょう。


事実、和泉府中〜久米田間への新駅設置要望は無いことから、今後もこの駅間に駅が設けられる可能性は低いといえるでしょう。

その他駅間の長い区間は、大阪府南部に集中していますが、いずれも駅間は密度の薄い住宅街や田畑が広がっており、新駅を設けるほど人口や建物が集積していないので、こちらもまた新駅設置の可能性が低いと思われます。

こう考えますとやはり、今後阪和線に新駅が設けられる可能性は望み薄、といったところでしょうか…

<駅間の短い区間>(短い順)
鶴ヶ丘〜長居(0.8km)
南田辺〜鶴ヶ丘、浅香〜堺市、三国ヶ丘〜百舌鳥(0.9km)
我孫子〜杉本町、杉本町〜浅香(1.0km)

駅間が長いのが、和歌山県内や大阪府内南部なら、駅間が短いのは大阪市内とその近く、と予想されますが、上記の区間をみるとやはりそのとおりといえます。
ただ、最も短い区間が、天王寺から少し離れた鶴ヶ丘〜長居(0.8km)間というのに、意外と感じた方もおられるのではないのでしょうか。

これは推測ですが、天王寺〜美章園〜南田辺〜鶴ヶ丘には、阪和線開業当時に既に大阪鉄道本線(現在の近鉄南大阪線)、南海鉄道平野線(後の阪堺電気軌道平野線、廃止後は大阪市営地下鉄(現・大阪メトロ)谷町線)が走っていたから、というのもあったのかも知れません。

また、堺市内にも駅間の短い区間があり、仁徳天皇陵古墳の側の「三国ヶ丘〜百舌鳥」の0.9kmは、ほぼこの古墳の南北の長さに相当する長さとなっています。
ここは、「古墳が大きい」というべきところかも知れませんね…

【他線と比較】

最後に、阪和線と近隣の他線とで、駅間距離を比較してみます。
上述のとおり、府県境で駅間が延びるという要因はありますので、その点も考慮して見ていただければと思います。
○JR大阪環状線(大阪〜天王寺〜大阪)
全線:1.14km

○JR大和路線(JR難波〜奈良)
全線:2.27km、大阪府内(JR難波〜河内堅上):1.74km、奈良県内(三郷〜奈良):3.44km

○南海本線(難波〜和歌山市)(※今宮戎、萩ノ茶屋含む)
全線:1.52km、大阪府内(難波〜孝子):1.44km、和歌山県内:3.1km

○南海高野線(難波〜橋本)
全区間:1.37km、大阪府内(難波〜天見):1.22km、和歌山県内:2.03km

○泉北高速鉄道線(中百舌鳥〜和泉中央)
全区間:2.86km

○水間鉄道線(貝塚〜水間観音)
全区間:0.61km


阪和線全線で見ますと、平均駅間距離は1.80kmですので、南海本線、高野線よりやや長く、大和路線よりやや短い程度でしょうか。
一方、大阪府内の距離でみますと、南海本線(難波〜孝子)とほぼ同じというのが興味深いところです。

こう他線区とみますと、阪和線の駅間距離は平均では、長くはないけど、短いわけでもないことが分かります。
だからと言って、更に新駅を設ける余地が残されているかどうかは別問題であることは、上述の「和泉府中〜久米田間」で触れたところです。



以上、本日は阪和線の「駅間距離」にスポットを当ててご紹介してみました。

まだご紹介できるネタがあるのかどうかは分かりませんが、用意できそうなら次回にでもご紹介できればと思っていますので、気長にお待ちいただければと思います。

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▲阪和線・久米田駅(西口駅舎)
和泉府中〜久米田間の駅間距離は3.0kmと、大阪府内では最長の距離を有しています。
一方で、この区間に新駅設置の構想は今のところ無い模様なので、しばらくは線内の府内最長駅間距離を保持するものと思われます。