JR東日本では、E657系特急型車両を改造した、新たな夜行特急列車を、2027年春に導入することを発表しました。

新たな夜行特急列車を導入します〜運行を通じて地域の皆さまと新たな観光需要を創出します〜|JR東日本

概要は以下のとおりです。

【運行開始予定】
2027年春

【運行エリア】
首都圏エリア〜北東北エリアなどを予定
(時期によって運行エリアの変更あり)

【車両】
E657系特急型車両10両1編成を改造

【座席・定員】
全席グリーン車指定席(個室)定員120名程度
(※)個室定員は1〜4名を予定

【列車デザイン】
●イメージ
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●エクステリアデザイン
車両全体を2色の青が包み込むように、1号車側と10 号車側に異なるカラーリングを実施。
1号車側には、夜行列車(ブルートレイン)の記憶を受け継ぐ明るい青「メモリアルブルー」を、10号車側には、真夜中から夜明けへと向かう時の流れを象徴する濃紺「ミッドナイトホライズン」を配置。
2色の青とそれらをつなぐ白いラインによって夜明け前の一瞬の輝き「ブルーモーメント」を描き出し、かつての夜行列車の旅の楽しさを受け継ぎながら、地域とともにその地域の新しい未来を切り拓いていくという意志を込めたもの。
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●インテリアデザイン
「シンプルでありながら上質な移動空間」をコンセプトに、プライベートスペースを確保するため全座席グリーン車指定席の個室タイプを設定。
また、一部座席はより快適にゆったり過ごせるプレミアムグリーン個室とする。
一人でのご利用に加え、二人以上でのご利用も想定した複数の部屋タイプとする予定。
その他、ラウンジスペースや販売スペースの設置なども予定

・プレミアムグリーン個室:
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・グリーン個室:
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・ラウンジ
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(画像はいずれも、上記発表資料(https://www.jreast.co.jp/press/2025/20250610_ho03.pdf)より引用)


詳細は、上記発表資料をご覧下さい。



かつて全国津々浦々で運行されていた夜行列車ですが、新幹線の延伸や空港の新設・滑走路延長、夜行高速バスの台頭などにより廃止が続き、今では定期列車としては東京〜出雲市・高松の「サンライズ出雲」「サンライズ瀬戸」のみとなりました。

一方、定期列車ではないものの、夜行列車にも使用できる設備を用意し、臨時列車としながらも、一定のシーズンを夜行列車として走る列車としては、JR西日本の「WEST EXPRESS 銀河」がよく知られているところです。

「WEST EXPRESS 銀河」は、かつて「新快速」などで運行されていた117系電車6両編成を改造し、個室や寝台、座席車などを設置し、比較的リーズナブルな運賃・料金で長距離列車の旅を楽しむことを主眼に、2020年から運行されています。
主に山陽、山陰、紀南コースを中心に、スポット的に他の線区でも運行されているのは、このブログでもご紹介しているとおりです。

「WEST EXPRESS 銀河」の特徴の一つとしては、上述のとおり117系電車を改造したものであるため、同車両が乗り入れ可能な線区、即ちJR西日本の直流電化区間(※)であれば走行可能であることから、近畿圏と地方を結ぶコースとして、様々な運行ルートを設定可能であることが挙げられます。
様々なルートが設定できることから、リピーターを獲得しやすく、列車の人気をより高めることができるといえます。
(※)JR四国の電化区間でにも乗り入れの実績あり

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▲和歌山駅に停車中の「WEST EXPRESS 銀河」紀南コース。
「紀南コース」の新宮発は昼行ですが、京都発は夜行となっており、かつての夜行列車「はやたま」を彷彿させる列車が、今の時代に合わせた設備で楽しむことができます。


そんな「WEST EXPRESS 銀河」が人気を博している一方、JR西日本よりも広い営業エリアを有するJR東日本でも、このような長距離夜行列車が運行されることを心待ちにしていたファンも多かったのではないか、と思います。
近年、JR東日本管内では、かつての夜行急行を彷彿とさせる特急「アルプス」を臨時列車として運行していたりなど、ニーズに応じて夜行列車を走らせてきた模様ではありました。

今回は、それを発展させ、専用編成を用意した夜行列車を導入し、都市圏と地方を結ぶルートを設定し、列車に乗ることを楽しむ旅行を提案する、というもので、まさにJR東日本版「銀河」といえる列車の誕生、といえるでしょう。

この「新たな夜行特急列車」ですが、まず注目すべき点として、「E657系の改造」という点でしょうか。
上述の「WEST EXPRESS 銀河」は、既に定期運用の終了が見込まれていた117系を改造したものでありました。
一方で、今回のJR東日本の夜行特急列車は、現在も「ひたち」「ときわ」で運用されているE657系を転用するというものであります。
通常、このような観光列車は、上述の「WEST EXPRESS 銀河」117系のように、定期列車での運用が終了した(あるいは見込まれる)車両を充当することにより、投資リスクを抑える、というのが常套手段であるように思えます。
そういう意味では、未だ「ひたち」「ときわ」で稼働してるE657系を充当するということが、相当の決断の上であった、ということが分かりそうです。
(通常なら、恐らくE653系が改造対象となっていたかと思います。)

また、座席が全て個室、というのも特徴で、これはJR西日本「WEST EXPRESS 銀河」には無い特徴で、「銀河」よりも価格帯は高めに設定し、ターゲットもそれ相応の客を狙っている、といえるでしょう。

編成も、10両編成となっていますが、逆に言えば、10両編成であるが故に、完全個室が実現した、ともいえるでしょう。
「完全個室」といえば、先頃引退が発表された「カシオペア」がデビュー当時有名でしたが、この「夜行特急列車」は、その「カシオペア」のコンセプトを一面で引き継いだ列車、といえるかも知れません。


運行エリアは、首都圏〜北東北等となっていますが、E657系が充当されることを考えると、首都圏から上越、羽越、奥羽本線経由で青森へ、あるいは、首都圏から東北本線または常磐線経由で盛岡へ、といったところが想定されるでしょう。

一方で、それ以外の運行エリアも可能性としてはありそうですので、デビュー後の運用が楽しみ、といえるでしょう。

かつて全国は勿論、現在のJR東日本エリアでも、多くの列車が走っていた「ブルートレイン」。
その塗色を現在に蘇らせた、この新しい夜行特急列車。
東北地方をはじめとした各地で、夜行列車の旅行を楽しむ乗客の姿が見られることを楽しみにしつつ、今後の続報に期待したいな、と感じたニュースでした。




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