南海電鉄では、同社の子会社である「南海フェリー」が運航する和歌山港〜徳島港間の航路について、2028年3月を目途に撤退することを発表しました。

フェリー事業からの撤退について |南海電鉄

概要は以下のとおりです。

【フェリー事業からの撤退時期】
2028年3月末を目途
但し、船舶・設備等の老朽化や従業員の確保など安全運航に支障が生じる恐れのある場合には、撤退時期を早める場合あり。

【経緯等】
・1998年の明石海峡大橋開業に伴う神戸淡路鳴門自動車道開通以降、本州四国連絡の主要ルートが陸路へ移行した。
・人口減少や少子高齢化に伴う利用者の減少、2020年度以降は新型コロナウイルス感染拡大による収入の大幅な減少に追い打ち。
・航路を維持し公共交通機関としての社会的責任を果たすため、徹底した経営合理化やコスト削減に努めてきたが、近年の燃料費の高騰は類を見ない水準となっており、抜本的な収支改善には至っていない
・コロナ禍により受けた経営の打撃により、2021年度以降は債務超過が続いている。
・現在運航している「フェリーかつらぎ」は就航から26年を経過し老朽化が著しく、船体更新の時期を迎えているが、「かつらぎ」を更新するには財務的に厳しい状況
・2019年に新造更新した「あい」1隻での運航継続も検討したが、効率的な運航及び経営は不可能との判断に至り、フェリー事業撤退を決定した。

詳細は、上記発表資料をご覧下さい。



和歌山〜徳島を結ぶ「南海フェリー」は、南海電鉄和歌山港線と接続し、大阪なんばと徳島を結ぶルートを構築しており、今なお「鉄道連絡船」として機能する貴重な航路であります。

一方、1998年の明石海峡大橋開業移行、トラック等の自動車航送が高速道路に移行し、大幅な収入源となりましたが、航路の移設(小松島⇒徳島)や、高速船の廃止、3隻から2隻への減船などのコスト削減策を実施してきました。

一方で、南海電鉄と連絡して、南海沿線と徳島港を、2000円台という格安で結ぶ「好きっぷ」を発売開始、今なお利用者から一定の支持を集めており、加えて2019年には新造船「あい」が就航したことから、利用者が減少傾向とはいえ、今後も引き続き航路が維持されるものだと思っていた方も多かったのではないかと思います。

しかし一方で、「あい」就航直後に襲った新型コロナウイルス感染症の影響は、ここ南海フェリーにも甚大な影響を与え、コロナ禍以降は債務超過の状態が続いています。
更に、「かつらぎ」の老朽化も待ったなしの状態で、本来ならば「あい」の後に更新するものと思いきや、債務超過の状態ではそれもままならない、ということで、今回フェリー事業からの撤退を発表したものです。

以上のとおり、色々な事情を検討したものの、航路維持には難しい状態で、まさに「万策尽きた」航路撤退、と言わざるを得ないでしょう。

一方で、下記朝日放送ニュースでは、和歌山県の宮崎知事(「崎」は右上が「立」)は、「撤退後の航路存続も視野に入れながら、国や徳島県などと連携して撤退の影響を最小限にとどめられるようにしていきたい」とコメントしており、現在の南海フェリーとは違う事業者による運航継続の可能性も完全には捨てていないことも読み取れます。
(参考)
南海フェリー 2028年3月に和歌山〜徳島フェリー事業から撤退へ 新型コロナ拡大が経営に打撃 近年の燃料費高騰も追い打ちの形か 和歌山県知事「撤退の影響を最小限にとどめられるようにしていきたい」

とはいえ、利用者の減少、燃料費や人件費の高騰、そして船舶の置き換えといった厳しい状況のある中で、事業承継を行う事業者がおいそれと出てくることも難しいのかな、とも思われます。

ともあれ、現在の形で、「南海フェリー」としての運航は、遅くとも2年後の2028年3月末には終了することが、今回明らかになったことは確かであります。



さて、2年後には南海フェリーが撤退し、その後引き継ぐ事業者が現れなければ、和歌山港〜徳島港の航路は消滅となりますが、そうなると同時に気になるのは、現在この南海フェリーと接続している「南海和歌山港線」の動向といえるでしょう。

和歌山港線では、現在平日13.5往復、土休日11往復運行していますが、その多くは南海フェリーと接続したダイヤとなっています。
逆に言えば、フェリー接続以外の沿線の通勤、通学、用務等の目的での利用が非常に少ないことが容易に推察されます。
確かに和歌山港駅周辺は工場が多く立地しているものの、住宅等はあまり多くないエリアで、沿線住民の利用を掘り起こすにも、そもそもの需要が非常に限られたものとなっていることが分かります。
(参考:和歌山港駅周辺の地図)


そうなれば、鉄道として維持する必要性も現在よりも低下することから、和歌山港線の廃止もあり得なくは無いのではないか、と思われます。
この点、鉄道系ポータルサイト「鉄道コム」では、南海電鉄の広報担当者に取材しており、現時点では和歌山港線の廃止予定は無く、今後も交通ニーズに応じて運行を続けていく旨を報じています。
(参考)


とはいえ、該当する「交通ニーズ」が航路撤退したとして、どの程度残っているのか、ということを考えると、どうやら和歌山港線も早めに乗っておいた方が良い、と言わざるを得ないのではないか、と個人的には思います。



本日は、「南海フェリー」の撤退の発表でありましたが、今年度は和歌山県内の公共交通にとって大きなニュースが続いた、とも言えたのではないのでしょうか。

昨年11月には、和歌山電鐵貴志川線について、2028年4月に「上下分離」移行を目指すことで合意がなされた一方、紀州鉄道では今年中にも廃止の可能性もある旨の報道がありました。


一方、JR西日本・紀勢本線に目を向ければ、昨年11月から特急「くろしお」の1往復増便運行が開始しており、来年度も引き続き実施される旨も既に発表されています。



長年このブログで和歌山県内の公共交通の話題を取り上げてきましたが、今年度ほど様々な動きが表面化した年度は無かったのではないか、と思わざるを得ません。
それぞれの方向性は、将来にわたって維持することに合意したものや、将来の維持を断念したもの、一方で将来の維持をどうするか今後検討が進められるものと、あまりにも対照的なものと言わざるを得ませんが、ここ和歌山県でも公共交通の維持に向けて大きな転換点に来ていることだけは確か、と感じているところです。

ともあれ、南海フェリーに話題を戻すと、長くともあと2年で運航終了となりますので、四国に向かう機会があれば、一度は利用してみて現状等をじっくり見ておきたいな、と感じた次第です。

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▲南海フェリーの「あい」(上)と「かつらぎ」(下)。
特に「かつらぎ」は就航後26年を経ており、外観からも老朽化を感じずにはいられないものでした。
一方で「あい」は就航6年とまだ新しいことから、今後のこれらの船体の動向についても気になるところです。


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▲和歌山港線を走る「すみっコぐらし」ラピート。
2021年10月、コロナ禍で航空需要が蒸発し、「ラピート」も運休列車が数多く発生していた時期に和歌山港線に乗り入れた団体臨時列車でした。
南海電鉄によると、フェリー撤退後の和歌山港線の廃止予定は無いとのことですが、利用状況を見るとフェリー撤退後も鉄道として運行されるものなのかは不透明、と言わざるを得ないのかも知れません。




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