静岡県の大井川に沿って走る「大井川鐵道」の井川線について、来る2026年6月1日(月)より観光列車化とすること等の運用変更を行う旨、同社社長の鳥塚氏のブログで明らかになりました。

井川線の運用変更(ダイヤ改正及び観光列車化)について | 大井川鐵道社長 鳥塚亮の地域を元気にするブログ

上記記事によりますと、6月1日からの変更点は以下のとおりです。

●井川線の列車(1日5往復)について全列車を観光列車化し、乗車料金を1人1乗車3,500円とする
●1日1往復、普通乗車券で利用できる列車を設定。
(千頭14:35発接岨峡温泉行き、接岨峡温泉10:45発千頭行き)
地域利用者に対する定期券式のフリーパスを発行
(発行手数料1,000円で、全列車に2年間乗車可能)


上記ブログによりますと、このような決断に至った背景について、以下のとおり記しています。
・井川線は、戦前に電力開発の専用鉄道として建設が開始され、昭和30年代にほぼ現在の形になった。
・電力会社の事業用専用鉄道に旅客鉄道を乗せていたものを、国の指導を受けて、大井川鐵道が電力会社から運行受託することで契約を交わして運行している。
・井川線の現状としては、沿線地域の人口減と過疎化により、地域住民の利用者は皆無で、過去15年間定期券利用者がゼロで、地域の足としての役割は終了と判断
・但し、鉄道の社会的便益性を鑑みて、地域住民へのフリーパスを含めることとした。


記事執筆時点では、静岡新聞をはじめとした報道(下記参照)と、上記社長ブログのみの情報となっていますが、今後正式な発表があるものと考えられます。
(参考)
大井川鉄道の井川線が6月から料金を大幅値上げへ 片道3500円で約2.6倍となる見通し=静岡|静岡新聞アットエス



大井川鐵道井川線は、全国でもここだけ、世界でも稀な「アプト式」と呼ばれる急勾配に対応した区間や、ダム湖の途中の駅という絶景が売り物の「奥大井湖上駅」といった、観光として楽しめる線区となっています。
また、上述の社長ブログ記事にもあるように、かつて電源開発を主体に建設された経緯もあり、急カーブをウネウネ走るその姿は、海外の登山鉄道を連想させる趣があり、鉄道ファンのみならず、多くの観光客が虜になる魅力に詰まった線区、と個人的には感じています。

一方で、過疎化で沿線人口が減少したこの地域では、ダイヤについても観光主体のダイヤとなっていることに加え、並行道路の整備もあり、この井川線の数駅間だけを乗車する、というツアーも組まれているのも事実のようであります。

井川線が電力会社(中部電力)からの委託で運行している一方、経営的にはこういった観光要素が詰まった井川線をより収益を生み出す線区とするための方策の一つとして、今回この観光列車化、と解釈できるでしょう。

また、地元利用者が今後発生することも考慮して、地域住民対象の激安なフリーパス(2年間で1,000円)も用意し、地域の利用にも対応する用意を示しています。


これだけ記すと、井川線と大井川鐵道を取り巻く現状を鑑みると、観光客に現在より多くの費用を負担してもらうのは、決して悪くないし、井川線の持続可能性、という意味ではそれしか方策は無いのかな、とも思います。

一方で、沿線地域では一定の理解を示すものの、急な発表や、それが「値上げ」ということに対しての嫌悪感が強いところはあるように感じています。
加えて、認可制となっている鉄道運賃制度では、厳格な手続きが求められることから、そういった面倒を回避するべく、運賃そのものを変更させるのではなく、運賃の倍額近い「企画料」を上乗せすることにしていることが、手続上は問題無いとはいっても運賃許認可制度の裏をかいた行為、ということで制度の趣旨に悖るのではないか、という問題提起も聞こえています。

このあたり、もう少し上手く話を地元としていくことはできなかったのかな、と思う一方、大井川鐵道側としても、観光鉄道としてこれまでの倍額以上の費用を観光客から集めようとするのであれば、上述の「アプト式」「奥大井湖上駅」だけでなく、終点の井川駅も含めて、沿線全体で周遊観光ができる観光資源や、それに対応したダイヤの構成といった、大井川鐵道自身の取組も必要だし、そうでないとそっぽを向かれて終わり…ということにもなりかねないのかな、とも思います。

私自身、およそ2年半前の2023年9月に、この井川線に乗車しました。
上述のとおり、アプト式や奥大井湖上駅、そして狭いトンネルをゆっくりゆっくり走る客車列車に、ワクワクしながら乗車したのは、よい思い出でした。
一方で、終点の井川駅には、食事や物販といった観光拠点となる施設も皆無で、そもそも飲食に困る事態にも遭遇し、そもそもの観光客受け入れをしっかりしたら、より良い観光資源になるのにな…と感じました。

この井川線の観光路線化、早速賛否両論が巻き起こっていますが、果たして移行後の利用者の動向はどうなるのか、また値上げとなった運賃・料金に見合うだけの満足度を大井川鐵道が提供できるのか、今後の成り行きに注目していきたいな、と思ったニュースであります。

私自身は、2023年9月にこの大井川鐵道井川線に乗車しました。
夏の晴れた日でしたので、非冷房の車両の窓を全開にし、車窓を堪能しました。
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途中の長島ダム駅では、アプト式で急勾配を通過するために、電気機関車が連結されますが、その様子もホームに居ながらにして見ることができました。
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奥大井湖上駅は、絶景の駅として、この日も乗り降りする乗客がいました。
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終点の井川駅に到着。
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停車中の客車。
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駅舎の中は一定整備されている模様でした。
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一方で、駅周辺には「井川ダム」以外の見どころがなく、食事をすることもできない状態でした。
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▲かつては売店か食堂か、何かを営業していたであろう建物

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▲折り返しの時間に井川ダムを見学しました。
大きなダム湖はひたすら静かで、心が洗われる光景で、多くの方に見に来て欲しい絶景に感じました。
一方で上述のとおり駅周辺にもてなす施設が皆無なこともあり、観光目当て集客するには、鉄道自体だけでなく、その周辺施設も含めたテコ入れが必要にも感じました。
今回の値上げにより、観光客にも満足してもらえる井川線として生まれ変わることができるのか注目していきたいな、と個人的には感じています。




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