大阪から山陽本線・播但線・山陰本線を経由し、香住・浜坂・鳥取を結ぶ特急「はまかぜ」。
かつては「あさしお」「まつかぜ」「エーデル鳥取」といった気動車特急が、京阪神と北近畿・鳥取方面を結んでいましたが、福知山線・山陰本線(京都〜城崎)の電化や智頭急行の開業により輸送体系が大きく変化した結果、現在唯一の京阪神地区と香住・浜坂方面を結ぶ特急列車となっています。

この「はまかぜ」は、国鉄時代から長らくキハ181系が充当されてきましたが、2010年11月に新型車両「キハ189系」が投入され、今もなお大阪発着の3往復が運行されています。

この「はまかぜ」の近年のトピックと言えば、2023年3月のダイヤ改正で、本数は3往復のまま、各列車の発着駅及び運転時刻を大きく変更したことが挙げられます。
(参考)


同改正前の「はまかぜ」は、概ね以下の様な運行体系でした。
<下り>
はまかぜ1号:大阪→浜坂
はまかぜ3号:大阪→香住
はまかぜ5号:大阪→鳥取
<上り>
はまかぜ2号:鳥取→大阪
はまかぜ4号浜坂→大阪
はまかぜ6号:香住→大阪

それが改正後は、以下の様な体系に変更となりました。
<下り>
はまかぜ1号:大阪→鳥取
はまかぜ3号:大阪→香住
はまかぜ5号:大阪→豊岡
<上り>
はまかぜ2号:城崎温泉→大阪
はまかぜ4号鳥取→大阪
はまかぜ6号:香住→大阪

特徴となるのが、鳥取発着の列車の時間帯で、同改正前は深夜の鳥取行き、早朝の鳥取発だったものが、改正後は朝の鳥取行き、昼の鳥取発に変更となりました。

これにより、城崎温泉〜鳥取間は、昼前後という観光に都合の良い時間帯を走ることになり、それまで普通列車を乗り継いで移動する必要があったものが、この「はまかぜ」の時間帯変更により、利便性が多いに向上したのではないか、と感じていただけに、この列車には一度乗車してみたいな、とこの改正発表の頃から感じていました。

折しも、今年も「WESTERポイント全線フリーきっぷ」が発売されることから、これを利用して、この「はまかぜ1号」と、鳥取駅で約2時間で接続する「スーパーおき5号」を乗り継ぎ、大阪から新山口まで、気動車特急を丸一日楽しむ旅行を楽しむことにしました。



まずは、大阪駅7:48発の「はまかぜ1号」に乗車します。
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▲特急「はまかぜ1号」の発車案内表示

平日の朝ラッシュ時間帯という慌ただしい時間帯の合間を縫って、キハ189系が入線してきました。
発車約5分前に大阪駅3番のりばに入線してきました。
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定刻に大阪駅を発車します。
私の乗車した2号車は、10名ほどの乗車でした。

その後、三ノ宮(8:13発)で5名ほど乗車し、明石(8:30発)では、1名乗車の一方、4名ほど下車していきました。
明石の下車は、恐らく同駅方面への大阪からの通勤利用ではないかと推測されます。

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▲舞子駅付近で、明石海峡大橋と瀬戸内海を眺めることができます。
「はまかぜ」のみならず、新快速電車でも見ることのできる風景ですが、こと「はまかぜ」に関しては、この後同じ座席から今度は日本海を眺めることができます。

姫路には8:53に到着します。
ここから播但線に入るため進行方向が入れ替わります。
姫路駅は8:59発の6分停車のため、飲み物の購入や写真の撮影を済ませます。
(飲み物の購入については、車掌からもこの姫路駅で済ませるよう、案内がありました。)

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姫路駅は、JR神戸線・山陽線ホームに停車します。

8時59分、進行方向を変えて、姫路駅を発車します。
姫路駅では、新幹線等からの乗り継ぎ客も含めて、車内は30名ほどの乗車となっていました。
丁度窓側はほとんど埋まっている感じでしょうか。

しばらくは姫路市内の住宅地を走りますが、徐々に田園風景が広がってきます。
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▲7月上旬の、田植えが終わった時期の播但線の車窓です。

特急「はまかぜ1号」は、播但線内では福崎、寺前、生野、竹田の各駅に停車しますが、播但線内では目立った乗客の動きはありませんでした。
竹田駅は、「天空の城」で有名な「竹田城」への観光に合わせて、下りの「はまかぜ1号」と上りの「はまかぜ6号」が停車するようになっていますが、折からの猛暑もあってか、竹田駅で降りていったのは数名だけでした。
ただ、気候の良い秋のシーズンだと、もっと乗降客は多いのではないか、と思います。
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▲「はまかぜ1号」は竹田駅にも停車します。(3往復ある「はまかぜ」のうち、1往復のみが停車)
駅には「はまかぜ」停車を歓迎する看板が設置されていました。

10時3分、和田山駅に到着します。
ここで、姫路駅に続き二度目の小休止で、6分間停車します。
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引込線には、キハ47形を改造し、両運転台とした「キハ41形」が止まっていました。
播但線の一部電化時に登場したこの形式ですが、上述の事情により改造された車両のため、前後で運転台の形態が全く異なるのが特徴といえます。
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「はまかぜ1号」は和田山を10時9分に発車します。
その後、八鹿(10時20分発)、江原(10時27分発)、豊岡(10時37発)で数名ずつ下車していきました。
大阪だけでなく、三ノ宮、姫路からでも、豊岡都市圏への初発列車として機能していることを実感しました。

城崎温泉には、10時46分に到着しました。
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▲城崎温泉駅に停車中の特急「はまかぜ1号」
大阪、三ノ宮、姫路から乗車してきた乗客の半数程度は、ここ城崎温泉駅で下車します。
ただ、それとほぼ同じくらいの乗客が同駅から乗車して、城崎温泉到着前とほぼ変わらない乗客数(1両当たり20名程度)となりました。

冒頭で記したとおり、2023年3月のダイヤ改正では、この「はまかぜ1号」に関して、浜坂行きから鳥取行きに延長となりました。
合わせて列車の時刻も2時間程度繰り上げられ、城崎温泉に宿泊した観光客が、鳥取砂丘方面へ向かうのに好都合なダイヤとなりました。

今回の乗客の入れ替わりを見ても、そのダイヤ改正は目論見どおり、という印象を受けました。
もっとも、城崎温泉から乗車してきた乗客の多くが訪日外国人旅行者でしたが、昨今の地方ローカル線では、外国人の利用も決して無視できない(特に観光路線)ことから、こういったダイヤ変更の施策が、持続的な地域鉄道の維持に繋がればいいな、と思いました。

城崎温泉を10時49分に発車し、いよいよ日本海の眺めが楽しめる区間に入ってきました。
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「山陰海岸ジオパーク」としてユネスコに認定されている、この山陰本線沿線の海岸は、複雑な海岸線であるリアス海岸がずっと続いています。
山陰本線も、その地形を縫って走っており、トンネルを抜けて時折見えてくる海岸と、そこで生活を営む集落の様子は、この「はまかぜ」ならではの車窓ではないかと思います。

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鎧〜餘部間の「余部橋梁」を通過します。
周知のとおり、この余部橋梁は、2010年に現在のコンクリート橋に架け替えられましたが、それまでは、山陰本線開業時から使用されてきた鋼製の鉄橋(トレッスル橋)が有名でした。

しかしその「初代」余部鉄橋も築100年にもなることから、新しいコンクリート橋梁に建て替えられ、現在の姿になりました。
現在の橋梁を通過するのは、今回が初めてでしたが、風対策のアクリル板が割と視界に入ったのが印象的でした。
勿論アクリル板は透明で、眺望が確保されているのですが、こういった所にも、過去の教訓を踏まえた対策がなされているというのを実感しました。


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浜坂駅には11時33分に到着します。
車内の乗客は城崎温泉からあまり入れ替わりは無く、ここ浜坂でも数名の乗車がありました。
この時間に鳥取方面への「はまかぜ」があることで、利便性の確保に繋がっていることが、改めて確認できました。

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いよいよ鳥取県に入った最初の駅、東浜駅あたりの風景。
城崎温泉を発車してから、つかず離れず車窓をともにしてきた日本海ですが、列車はこれから鳥取市街に向けて内陸に進路を取るため、このあたりで一旦お別れとなります。

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鳥取市内中心部に向けて、列車は高架橋を走ります。
非電化区間ではありますが、鳥取駅とその付近は国鉄時代に高架化されました。

12時7分、「はまかぜ1号」は定刻に鳥取駅に到着しました。
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▲鳥取駅に到着した「はまかぜ1号」。
鳥取駅にキハ189系が入線してくるのは、この時だけです。

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▲キハ126系との並び

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▲(左から順に)若桜鉄道WT3000形、キハ126系、キハ189系、キハ47形
鳥取駅の4面全てに列車が停車している一瞬でした。



以上のように、大阪→鳥取間と、かつての「まつかぜ」「エーデル鳥取」を彷彿とさせる乗車となった「はまかぜ1号」。
途中、姫路と和田山の各駅で5分程度の停車時間がある上に、瀬戸内海と日本海を同じ列車で両方を眺めることができる、と車窓を楽しむこともできることから、鉄道ファンは勿論、様々な方にこの列車の旅行をご紹介できれば、と思っています。


一方、この「はまかぜ」が走行する山陰本線・城崎温泉〜鳥取間の輸送密度は、城崎温泉〜浜坂間は574人、浜坂〜鳥取間763人となっており、利用促進が課題となっています。
この区間については、兵庫県庁の但馬県民局で「JR山陰本線利活用協議会(ワーキングチーム)」という組織を設置し、県や沿線市町、JR西日本、バス事業者や観光関係、利用者代表といった関係者を交えた利用促進の取組を実施しています。
(参考)


上記Webサイト掲載の資料を見ますと、様々な利用促進を沿線自治体をはじめとした様々な団体が実施していますが、残念ながらなかなか成果に結びついていない、ともいえなくもなさそうな状況です。
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▲山陰線・城崎温泉〜浜坂間の輸送密度の推移。
(JR山陰本線利活用協議会(ワーキングチーム)令和7年度第2回資料(https://web.pref.hyogo.lg.jp/tjk04/chiikizukuri/tetsudou/documents/05r82shiryo3_compressed.pdf)より引用)

コロナ禍後の輸送密度の回復が2022年度をピークに逆に低迷傾向となっているのが課題と感じます。
当ブログでもご紹介している紀勢本線・新宮〜白浜間に関してはコロナ禍後から一貫して輸送密度が回復しているのと対照的であり、それが故に余計に危機感を抱いた次第です。
(参考)
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(紀勢本線活性化促進協議会 新宮白浜区間部会 第18回部会資料(https://www.city.shingu.lg.jp/div/kikaku/pdf/JR/20260430JR.pdf)より引用))


本記事でご紹介したように、特急「はまかぜ」の車窓、特に城崎温泉〜鳥取間は、リアス海岸から雄大な日本海が見えるという、風光明媚な区間であります。
この山陰本線の車窓自身が観光資源であることに加え、沿線には城崎温泉や湯村温泉、山陰ジオパークといった観光資源にも恵まれており、それらの観光地を巡る手段として、特急「はまかぜ」を主体とした山陰線の列車を更に活かしていく必要があるかと思います。

そういった意味では、2023年3月ダイヤ改正で特急「はまかぜ」の運行ダイヤを変更したのは、観光客を意識した施策として評価したいですし、実際多くの利用者が城崎温泉〜鳥取間を利用していたので、その効果は一定あるのではないか、と思います。

また、冬季には観光列車「はなあかり」を、臨時特急「かにカニはまかぜ」に増結して、大阪〜浜坂間を運行する取組も実施しています。
(参考)


「はなあかり」に乗車できる人数に限りはあるとは言え、こういった列車が運行され、地域に観光客を誘客する手段として確立すれば、地域としても鉄道を支えていく理由が見つかってくるといえるだけに、更なる取組の強化を期待したいところです。



最後は、他地域でもよく聞くローカル鉄道の存廃や利用促進についての話になってしまいましたが、ともあれ、大阪を朝8時前に出て、瀬戸内海をと日本海を同じ列車で眺めながら4時間かけて丁度お昼に鳥取駅に到着するダイヤは、日常を忘れて鉄道旅行に没入するには丁度良い時間と距離だと思いますので、是非多くの方々に楽しんでいただければな、と感じました。



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