先の記事でもご紹介したとおり、特急「はまかぜ1号」を大阪から鳥取まで乗り通した後、昼食を挟んで、今度は鳥取から新山口まで「スーパーおき5号」に乗ることにします。

この「スーパーおき5号」、鳥取を13時52分に発車し、終点新山口には19時14分に到着する、全長378.1kmを5時間22分かけて走り抜くロングランな特急列車となっています。

国内の在来線特急列車で5時間超えて運行する列車としては、
・特急「宗谷」(札幌〜稚内)396.2km 所要時間5時間12分
・特急「オホーツク」(札幌〜網走)374.5km 所要時間5時間15分〜5時間26分
・特急「にちりんシーガイア」(博多〜宮崎空港)405.5km 所要時間6時間20分(下り)5時間49分(上り)

といった列車が挙げられますが、「スーパーおき」は、これらの列車と伍する距離と所要時間を有しており、いつか乗り通してみたいと思っていたところ、今回「WESTERポイント全線フリーきっぷ」で利用できる機会に恵まれたことから、今回旅程に組み込んだ次第です。

先に乗車した「はまかぜ1号」に続き、この日はディーゼル特急列車三昧となる一日となりましたが、その後半戦の旅行を様子を、是非ご覧下さい。



「はまかぜ1号」で鳥取駅に到着し駅近くで昼食を取ってから、「スーパーおき5号」に乗るべくホームに向かいます。

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▲鳥取駅に停車中のキハ187系「スーパーおき5号」。

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▲隣ホームには、米子からの「スーパーまつかぜ8号」が到着していました。
キハ187系どうしの並びが見られました。

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▲キハ187系の側面に貼り付けられたロゴ。
鳥取県の花である「二十世紀梨」のイラストです。

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▲キハ187系の行先表示。
鳥取〜米子棺はワンマン運転となっています。

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▲鳥取駅での「スーパーおき5号」発車標。
ここから5時間以上かけて、新山口まで向かいます。

13時52分、鳥取駅を出発しました。
出発と同時に勢い良く加速し、あっという間にトップスピードに到達する。
この「スーパーおき」をはじめとするキハ187系の魅力は、このハイスペックな加速力が一番といえます。
島根県と鳥取県の高速化事業により、鳥取〜米子〜益田間は、基本的にキハ187系の性能をフルに発揮したダイヤが組まれています。

このキハ187系が投入されるまでは、純然たる国鉄時代のローカル線の風情を色濃く残していたこの山陰本線が、この高速化事業で生まれ変わり、かつては通勤出来なかった区間(例:米子〜鳥取間)でも十分通勤圏内になる等の、大きな効果が得られました。

キハ187系が投入されて四半世紀が過ぎましたが、その加速性能の高さをフルに発揮したダイヤは、今も健在であります。

列車は鳥取大学前・倉吉と停車し、次は米子まで約30分間ノンストップで走り続けます。
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▲先の「はまかぜ1号」で眺めて以来の日本海が見えてきました。
のどかな風景とは対照的に、「スーパーおき5号」は全速力で走り続けます。

14時54分、米子駅に到着します。
ここで3分停車です。

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▲米子駅に停車中の「スーパーおき5号」。
駅名標は雲の形となっていますが、言うまでもなく273系「やくも」をあしらったデザインとなっています。

ここで半分程度埋まっていた自由席の乗客は粗方入れ替わり、3割くらいの乗車率となりました。

この「スーパーおき5号」、途中駅の停車時間は、ここ米子駅の3分が最長で、その他は2分未満となっています。
飲み物の購入やホーム上の様子を撮影できるのも、ここ米子が最初で最後となってしまいます。

15時48分、米子駅を発車します。
「スーパーおき5号」は引き続き、エンジン音を響かせて鋭い加減速を続けながら、西へ西と向かいます。

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▲安来駅では、大糸線カラーのキハ120形とすれ違いました。
(突然の出来事だったので、こんな中途半端な写真しかありませんでしたが…)

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▲松江を過ぎ、今度の車窓に見えてきた水辺の風景は、「日本海」ではなく」「宍道湖」です。
この日は「瀬戸内海」「日本海」そして「中海」「宍道湖」と、一体どれだけの水辺の風景を眺めることができたのか、というくらいに車窓も楽しめる行程といえるでしょう。

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▲直江駅で「やくも24号」とすれ違います。
273系の実車を見たのはこれが初めてでした。
今度はこの273系に乗車してみたいところです。

出雲市を出発すると、再び非電化の区間に入りますが、「スーパーおき5号」は引き続き、高出力のエンジンを回しながら目一杯のスピードで走り続けます。

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▲田儀駅で「スーパーおき4号」とすれ違いのため停車です。
高速性能に長けたキハ187系ですが、単線区間が故に、どうしてもすれ違いのための停車が発生するのは致し方が無いところです。

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▲温泉津駅出は、キハ120形の2両編成とすれ違います。
出雲市方の車両は、黄緑と黄色のラッピングが施された車両です。
木次線の沿線活性化のために実施されたラッピングのようで、当該車両には「たなだ」という愛称が付けられています。
(参考)
木次線ラッピング列車 愛称決定 | 木次線利活用推進協議会 木次線ポータルサイト

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▲江の川の長い鉄橋を渡ると、江津駅に到着します。
2018年3月までは三江線が分岐していましたが、廃止されてはや8年が経過しました。

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▲波子(はし)駅でもキハ120形とすれ違います。
ここ波子駅は、波子海岸や、「島根県立しまね海洋館 アクアス」という水族館があります。

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▲17時0分、浜田駅に到着します。
出雲市〜益田間の山陰本線沿線の主要都市の一つで、駅近くには地域医療の拠点病院である「浜田医療センター」もあり、これまでののどかな沿線風景が入れ替わる一瞬でした。

浜田の次の停車駅、三保三隅が近づくと、この「スーパーおき」の行程の一番ともいえる車窓が見えてきます。
山陰本線の撮影地としても有名な「折居海岸」です。

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▲折居海岸を通過する「スーパーおき5号」。
観光列車「TWILIGHT EXPRESS 瑞風」ですと、減速して雄大な砂浜の風景をじっくり楽しめるのでしょうが、そこは「スピードこそ命」の「スーパーおき」、一瞬で通過していきました。
写真を撮影したい場合は、近くの「道の駅ゆうひパーク三隅」から撮影するのが良さそうです。

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▲折居海岸を過ぎると、三保三隅駅に停車します。
朝から乗り通してきた山陰本線とも、間もなくお別れです。

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▲17時36分、益田駅に到着しました。
ここで20名ほど乗車してきて、車内はほぼ5割程度の乗車率となりました。
まとまった乗車は、鳥取、米子、出雲市、そしてここ益田が特徴的でした。
これから山口線に入るので、少しは停車するか、と思いきや、ここも2分停車で出発していきます。

「とにかく走り続ける」。
「スーパーおき」の印象と聞かれると、この一言に象徴されるでしょうか。

一方、山口線に入ると、このキハ187系もスピードダウンしていきます。
益田までの山陰本線とは異なり、ここ山口線は高速化されいないこともあり、それまでの走りとは打って変わり、のんびりしたスピードで山口線を走ります。

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▲石見横田で「スーパーおき6号」とすれ違います。

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▲18時11分、津和野駅に到着しました。
「山陰の小京都」とも称される歴史ある街並み、そして鉄道ファンとしては「SLやまぐち号」の発着駅として、観光都市として有名な津和野ですが、この日「スーパーおき5号」に乗車してきたのは数名だけでした。

時間帯のこともあり、もっと津和野駅から乗車する客が多いと思っていたのに意外でしたが、津和野駅の1日の乗車人員は110名(令和5年度。出典:島根県統計書)しかないことを考えると、金曜日の夕方であるとこんなものか…とも感じました。


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沿線の風景を眺めていると、赤い瓦の家が建ち並ぶ風景が目に付きます。
この赤い瓦は「石州瓦」と称され、山口県や島根県を中心とした中国地方では様々な所で見ることができますが、やはりこのあたりだと、どの家を見ても「赤瓦」が目に付きます。

こういった風景も、実際に乗ってみて初めて分かる、地域の特色ですし、それを楽しむことができるのも、鉄道の旅の楽しみでしょうか。

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▲18時35分、三谷駅に停車
この駅の近辺の家も、「石州瓦」です。

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▲三谷駅を発車して約30分、住宅街や商業施設が建ち並ぶ風景が見えてくると、山口駅に到着です。
山口駅からは10名ほど乗車してきました。
山口駅から終点の新山口駅までは約15分ですが、普通列車でも25分程度の距離ですので、この区間だけ特急列車に乗る人が意外といて驚きました。
ただ改めて山口駅の時刻表を見ると、「スーパーおき5号」の前後の普通列車は18時38分発と19時25分発と、50分ほど運転間隔が空くので、その合間にやってくる「スーパーおき5号」に乗って早く新山口に向かう乗客もそれなりにある、ということでしょうか。


鳥取駅を出て5時間22分、終点の新山口駅に到着しました。
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▲鳥取駅に到着したキハ187系「スーパーおき5号」

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▲この地域では未だ現役のキハ40系との並びを記録。

鳥取、島根の両県を東西に走り抜け、山口県を南北に貫いたロングランの旅路は、ここで終了です。
乗ってきた乗客の多くは、足早に新幹線乗り換え改札口に向かっていきました。

新幹線接続特急の使命の証を最後に見届けてから、私も次の目的地に向かうべく、新幹線ホームに向かうのでありました。



以上が、去る7月3日に乗車した、特急「スーパーおき5号」の乗車記でした。
鳥取から新山口まで、この列車に乗り通す客というのは(鉄道ファン等を除けば)まずいないのではないかと思います。
そもそも「スーパーおき」は
・鳥取〜米子間の鳥取県内の都市間輸送
・米子・松江・出雲市〜大田市・浜田・益田等の島根県内(及び鳥取県西部)の都市間輸送
・益田・津和野〜新山口の新幹線接続輸送

といった少なくとも3つの役割が集約された一本の列車、といえるでしょう。

ただ、基本2両編成という編成長からも垣間見えるように、利用者の減少はこの「スーパーおき」の走行区間でも課題で、特に山陰本線の出雲市〜益田と、山口線の益田〜山口間は、輸送密度2,000人未満の線区となっています。

このうち、出雲市〜益田間については、今年(2026年)4月に「JR山陰本線(益田-出雲市間)利用促進協議会」が設立されました。
(参考)
JR山陰本線(益田-出雲市間)利用促進協議会設立総会(4月13日) | 島根県大田市公式サイト
JR山陰本線利用促進協議会 益田駅から出雲市駅間の利用者が大幅に減少 利用が落ち込む鉄道路線をどう維持する? 島根県(2026年4月13日掲載)|日本海テレビNEWS NNN

この区間の輸送密度は、2024年度で868人と、国鉄分割民営化直後の1987年度(2,779人)の3割にまで減少しています。
(出典:データで見るJR西日本2025)

しかも、上記報道によると、2010年度の輸送密度1,512人に比べてもこの14年で4割減となっており、当区間に限らない話ですが、少子高齢化や高速道路整備等による利用者の減少が進んでいます。

一方で、このブログでも縷々述べてきたとおり、「スーパーおき」や「スーパーまつかぜ」に投入されているキハ187系による高速輸送は、この地域での観光誘客は言うまでもなく、通勤・通学輸送、通院や買い物の利用等に欠かせない社会インフラでもあることに、今回乗車して改めて実感しました。

収支に関しても、直近の発表(※)では営業係数が536(収入の約5.3倍の費用を要する)となっており、持続的な運営が必要なためには、沿線地域からの支援も必要な水準、といえるかも知れません。
(※)輸送密度2,000人/日未満の線区別経営状況に関する情報開示:JR西日本

一方で、上述のとおり高速化事業で多額の負担をしてきた沿線地域がこれ以上の負担を行うことが、交通に限らず地域住民の生活を様々な面で支える必要のある行政にとって、住民の理解を得て進めることができるのか、という点にも留意が必要でしょう。


加えて山口線に目を向けると、こちらは山陰本線・出雲市〜益田間よりも更に輸送密度が低く、宮野〜津和野間は541人、津和野〜益田間は433人と、同社管内のローカル線でもかなり少ない部類に入っています。
上述の乗車記のように、3往復と少ないながらも、益田市や津和野町と新山口を結び新幹線沿線からの観光やビジネスの移動で利用されている実態もある一方、上記の輸送密度であるのならば、それこそ路線の存廃について議論が出かねない、とも思ったりしています。

その迫力ある走りとは対照的に、沿線(特に出雲市以西)の利用状況が厳しい現状をも目の当たりにした、今回の乗車記でした。

とはいえ、本州では最も長い時間乗ることができ、また海や湖、そして山といった様々な自然を車窓から楽しめるのも、この「スーパーおき」の大きな魅力といえます。
そして何と言っても、のどかな車窓の中を最高速度120km/hで走り抜けるという体験は、ここでしか味わえないレアなものです。

是非一度乗り通してみて、山陰本線や山口線の旅を楽しんでみてはいかがでしょうか。



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