JR西日本では、本日(8月6日)に、2025年度の区間別平均通過人員(輸送密度)を発表しました。

2025年度区間別平均通過人員(輸送密度)について:JR西日本

区間別のデータにつきましては、上記発表資料をご覧いただくとして、以下にて個人的に気になっている線区の輸送密度をみていきます。
(以下、特に断りの無い場合は、「人」は輸送密度(人/日・km)を指します。)



【紀勢線・新宮〜白浜間:997人(+37人)】
当ブログでも、和歌山県内の線区としてその利用促進事業をご紹介している、紀勢線の新宮〜白浜間ですが、前年度(2024年度)に引き続き、約3%の増加となりました。
(参考)




輸送密度1,000人にはわずかに至りませんでしたが、2023年度の935人からこの2年間で60人程度増加しました。

ただ、コロナ禍前の2019年度(1,085人)と比べるとようやく92%の水準にまで戻ったものの、依然コロナ禍前に至っていない水準となっていることには留意が必要です。

一方、同区間の特急列車乗車人員(新宮〜白浜間の各駅から特急列車に乗車した人数)のデータを見ますと、2024年度は乗車人員433人/日であったものが、2025年度は482人/日と、11.3%の増加となっています。

それにも関わらず、輸送密度でみると3%の増加に留まっているということは、ざっくり言えば特急列車を利用する観光客等は増加したものの、普通列車を主体とした通学利用が減少して、特急利用の増加分を打ち消した結果、といえるのではないか、と思われます。
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▲紀勢線・新宮〜白浜間の特急列車乗車人員(白浜駅は新宮方面のみ)
特急列車の乗車人数は1割程度増加しているのに、輸送密度が3%増に留まっていることは、普通列車の利用(主に高校生)の減少が原因と推察されます。


通学利用の減少は沿線地域の少子化や人口減少に起因する、構造的な理由であることから、おいそれと改善が難しいだけに、特に観光資源が豊富な紀勢線・新宮〜白浜間で言えば、特急列車の利用をいかに維持・拡大していくのか、がやはりポイントとならざるを得ないと思われます。

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▲紀勢線・日置川橋梁を走る283系「オーシャンアロー」。
今年でデビュー30周年を迎える「オーシャンアロー」等の特急列車が、引き続きこの線区を走り続けることができるよう、より多くの観光客に特急「くろしお」を利用していく必要があります。




【加古川線・西脇市〜谷川間:345人(+52人)】
輸送密度2,000人未満の線区では、各線区で利用促進に向けた取組を進めていますが、そのひとつ、加古川線の西脇市〜谷川間では、「JR加古川線(西脇市〜谷川間)維持・利用促進ワーキングチーム会議」という会議体で、沿線市や兵庫県、JR西日本等が委員となり、同区間の利用促進に取り組んでいます。
(参考)
兵庫県/令和8年度JR加古川線(西脇市-谷川間)維持・利用促進ワーキングチーム会議

特に2025年度は、大阪・関西万博期間中の利用者の増加を検証する目的で、加古川線の列車を増発させるとともに、特急「こうのとり」の一部列車を谷川駅に臨時停車し、加古川線との接続を図り利便性を向上させる取り組みが実施されました。
(参考)
加古川線の増発と一部の特急「こうのとり」号の谷川駅臨時停車を実施します〜加古川線 西脇市〜谷川駅間 大阪・関西万博期間中のご利用増加を検証〜:JR西日本

そういった施策の成果もあってか、加古川線・西脇市〜谷川間については、17.7%増の輸送密度345人を記録しました。

とはいえ、この程度の輸送密度ですと、バスでも支障ないレベル、ということもこれまた事実でありますので、今後この線区の利用促進や路線維持について、地域と鉄道事業者でどのような議論がなされ、どのような方向性が取られていくのか、引き続き注目していきたいと思います。

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▲谷川駅に停車中の加古川線125系。
昨年度はこの谷川駅に特急「こうのとり」が臨時停車し、加古川線の列車との接続を図りました。
その成果もあり、輸送密度は約17%増加しましたが、母数の水準が少ないだけに、今後の線区のあり方の議論がどのように進んでいくのか、気になるところです。




【芸備線・備後落合〜備後庄原間:89人(+13人)】
今後の方向性、という意味では、現在国の主導する「再構築協議会」において線区のあり方が検討されている芸備線の状況が気になるところです。

今回の発表によりますと、再構築協議会の対象となる区間の輸送密度については、以下のとおりとなっています。
・備中神代〜東城間:83人(+2人)
・東城〜備後落合間:25人(+6人)
・備後落合〜備後庄原間:89人(+13人)

再構築協議会の設置前に比べると輸送密度は増えているとはいえ、果たして鉄道というモードが求められる水準であるのかの議論が必要なレベルであることには変わりない模様です。

また、下記の再構築協議会の報告によりますと、芸備線単体のみならず、地域に対する経済効果の結果についても報告されていますが、これとて芸備線を維持し続けるほどの大きな効果があるのか、というところにも議論が必要な水準となっている模様です。
(参考)
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▲芸備線再構築協議会では2025年度、地域経済効果の最大化及び検証を目的とする実証事業(実証事業A)が実施されました。
上記画像は、再構築協議会で報告された事業結果の資料の一部で、これによると事業を通年実施した場合の費用8.3億円に対し、定量的価値は4.3億円と、費用対効果でみると、費用の半分の効果しか得られていないことが明らかにされています。
(出典:https://wwwtb.mlit.go.jp/chugoku/content/000370683.pdf


令和6年(2024年)3月に第1回の再構築協議会が開催されて、今年度が3年目となります。
再構築協議会については、協議開始から再構築方針の作成までの期間は、目安として「3年以内」という期間が示されていることから、今年度の事業結果をもとに、来年度には今後の芸備線の方向性を示す「再構築方針」が作成されるものと思われます。

またその内容は、芸備線と同様に利用促進が求められるローカル鉄道を抱える他の地域にとっても、少なからず影響を与えるものと思われますので、この芸備線の動向についても、引き続き着目する必要があるでしょう。



以上、昨年度のJR西日本管内線区の輸送密度が発表されたことを受け、気になる線区を中心にご紹介しました。

昨年度は大阪・関西万博の影響で増加した線区も多い印象でしたが、特に地方ローカル線に関しては、人口減少や少子高齢化が更に続き、厳しい利用状況が続く中、沿線自治体も含めた利用促進の取り組みが増えてくるものと思われます。

その結果が、ダイヤや路線のあり方にどのような影響を及ぼしてくるのか、引き続き当ブログでもしっかり見ていきたいと思います。



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