沖縄県に鉄道は有るのか、無いのか?

それを改めて問いかけるSNS投稿を、よりによって当の沖縄県知事から発せられたのを目にしました。


投稿の要旨は、上記投稿の「本島を南北につなぐ鉄軌道をはじめ、モノレールの延伸、LRT・BRTなど、交通の空白地域をなくし、新しい公共交通ネットワークを構築します。」にあるように、公共交通の充実を目指す、というもののようです。

その冒頭に記されているのが、
「沖縄は全国で唯一、鉄道がありません」
の一文。

一見単純なように見えて複雑なこの問題、備忘録がてらいろいろ考えてみたいと思います。
(なお、本稿は上記発言に対する筆者の個人的な意見を羅列したものであり、特定の政治的意見を支持・批判するものではありません。)



【ゆいレール(沖縄都市モノレール」)は鉄道か?】
「沖縄県の鉄道」と聞いて真っ先に思い浮かんだのは、「沖縄都市モノレール(ゆいレール)」です。
20260214_151505
▲沖縄都市モノレール(ゆいレール)儀保駅に停車中のゆいレール1000形車両。

那覇空港駅から那覇市の中心地を経由し、隣の浦添市の「てだこ浦西」駅に至るこの路線。
素人目に見ると、「レール」という名称があるだけに「鉄道」と思えてしまうのですが、上述の県知事の言葉を借りると、「沖縄県に鉄道はない」ということですから、「ゆいレール」は鉄道ではない、ということになってしまいます。

では「ゆいレール」は何なのか?ということですが、同路線は全線、「軌道法」に基づく路線として営業されています。
すなわち「鉄道ではない」けれども「軌道である」というのが、厳密な答えのようです。

確かに「鉄道事業法に基づく鉄道事業」は沖縄県には「無い」ことは事実ですので、そうなれば、冒頭の沖縄県知事の言葉も間違いではない、といえるでしょう。



【軌道法が鉄道でない、とすれば…?】
では「軌道法に基づく軌道は、鉄道ではない」という解釈を他の地域に当てはめてみると、果たしてどうなるのでしょうか。

代表的なのはOsaka Metro(大阪メトロ)で、全線(※)が軌道法による路線となっていますが、例えば大阪市内の大動脈である大阪メトロ御堂筋線を「軌道法だから鉄道ではない」という人は、恐らくいないと思います。
(※)南港ポートタウン線は一部区間が軌道法準拠

「軌道法準拠だが実質的に鉄道事業法に基づく鉄道」というのは、大阪メトロ以外にも名古屋鉄道豊川線、そして北大阪急行電鉄の箕面船場阪大前〜箕面萱野間も該当します。
また、ゆいレールを含む「モノレール」や、「新交通システム」も軌道法に準拠しています。

20240323_100822
▲北大阪急行電鉄 箕面萱野駅に停車中の大阪メトロ30000系(31系)車両。
この区間も、軌道法に基づく軌道として営業されています。


更にややこしいことに、同じ「モノレール」であっても「鉄道事業法」に基づくモノレール(湘南モノレール、東京モノレール、舞浜リゾートライン)があるので、とにかく「モノレール」が絡むと、この手の議論はかなりややこしいものとなってしまいそうです。

結局のところ、「軌道法だから鉄道じゃない」とは言えるようであって、一概に言えないともいえますし、言い切ってしまうのは若干の危険性も伴うようにも感じたりしました。

これらの現状を踏まえた個人的意見としては、「軌道法」に基づく「モノレール」「新交通システム」くらいは「鉄道」に分類してもいいのかな、という感じでしょうか。
なお、鉄道事業法施行規則では、鉄道の種類について、以下のとおり定めています。

第四条 法(管理人注:鉄道事業法)第四条第一項第六号の国土交通省令で定める鉄道の種類は、次のとおりとする。
一 普通鉄道
二 懸垂式鉄道(管理人注:懸垂式モノレール)
三 跨こ座式鉄道(管理人注:跨座式モノレール)
四 案内軌条式鉄道(管理人注:新交通システム等)
五 無軌条電車(管理人注:トロリーバス)
六 鋼索鉄道(管理人注:ケーブルカー)
七 浮上式鉄道(管理人注:リニアモーターカー)
八 前各号に掲げる鉄道以外の鉄道




【では正直なところ、県知事は何を言いたかったのか?】
以上見てきたように、
「沖縄県には鉄道事業法に基づく鉄道は無い」
「一方、同県には軌道法に基づく軌道は有る」
「他府県には軌道法に基づく地下鉄や普通鉄道がある」

ということから考えると、冒頭の沖縄県知事の「沖縄県には鉄道はありません」というのは、間違いではない、とはいえるものの、国内の鉄道及び軌道の法体系及び実質的な運用を考えると「無い」と言い切るのには少々厳しいところもあるのかな、と思うところです。

ではそんな中、では沖縄県知事がこの投稿で言いたかったことは何なのか、と考えると、繰り返しとなりますが、上記投稿中の
本島を南北につなぐ鉄軌道をはじめ、モノレールの延伸、LRT・BRTなど、交通の空白地域をなくし、新しい公共交通ネットワークを構築します。」

から類推すると、「本島を南北に結ぶ都市間連絡鉄道」のことなのかな、と考えたりすることもできます。
(※)但しここで「鉄軌道」としているところを見ると、「軌道」でも許容している節はあるのですが、だとすると冒頭の「ゆいレールが走っているのに鉄道がない」という問題に戻ってくるわけですが…




【結局、沖縄県知事の「沖縄には鉄道が走っていない」発言は正しいのか?】
本題に戻り、冒頭の沖縄県知事の「沖縄は全国で唯一、鉄道がありません」という発言は正しいのか正しくないのか?ですが、上記で記したように、「鉄道事業法上の鉄道は無い」けど「鉄道に分類される乗り物は走っている」のが近いのではないかと思います。
だとすると、沖縄県知事の当該発言は「正しい」とは言える一方「間違っていない」訳でもない、という何ともどっちつかずな結論になりそうです。

これを正か誤か、どちらか一方を選べ、というのは、それこそ発言のどの部分を判断してか、ということになりますし、その判断には現在の沖縄県知事に対するそれぞれの評価が入り込む余地があるとも考えられますので、皆さんそれぞれで判断が異なってくるのかな、とも思います。

結局「それぞれが、それぞれの判断基準で判断せよ」という、何とも玉虫色な結論ですね…


【沖縄県に「鉄道があるかないか」に対する個人的な考え】
では仮に、私個人が「沖縄県には鉄道があるか無いか」と聞かれたら、まあ「ある」と答えるでしょうね…
個人的には、上述のとおり、鉄道事業法上の「鉄道」だけでなく軌道法上の「軌道」まで含めないと、「鉄道」というインフラを議論できないんじゃないか、と考えているが故の結論、といえるでしょう。

なので、このブログでも時折「鉄軌道」という言い方をしているのは、路面電車、LRT、モノレールといった「軌道」にも分類される乗り物も範疇に入れないといけないからであります。

代表的なのが、いわゆる「全国の鉄道完全乗車」であります。
仮に「鉄道事業法上の鉄道」のみを完全乗車対象としてしまうと、上述の大阪メトロ各線は対象外となりますが、その線引きは実態に即しない、ことは趣味者の方々にはお分かりいただけるかと思います。
そうなると、「軌道法上の軌道」まで含めて完全乗車対象とすべきだ、という結論は自ずと出てくるかと思います。

私自身、「国内鉄軌道全線完乗」を達成したのが、他でもない「ゆいレールのてだこ浦西駅」でありました。
(参考)



様々な経緯でここが私の全線完乗達成地、となったわけですが、それだけ特別な思い入れがあるのは否定しようがありません。
それだけに、「ゆいレール」が「鉄道で無い」という県知事の発言は、例え解釈が間違っていなかったとしても、考え方として相容れないよなあ…と思ったりしました。
(勿論、これをもって県知事の施策や功績、人格を否定するものではありませんし、そんな範囲にまで議論を広げる趣旨は皆無(全く無い)ことは、繰り返し述べておきます。)

20260214_092447
20260214_092401
20260214_093225
▲今年(2026年)2月14日、沖縄都市モノレール(ゆいレール)てだこ浦西駅で、日本国内の鉄軌道を全線完乗しました。
私の全線完乗ルールでは、「鉄道」「軌道」を対象としているので、勿論「ゆいレール」も対象としていました。
「鉄道」と「軌道」を分け隔て無く全線乗車の対象としていただけに、「沖縄県に鉄道が無い」と言われても個人的に違和感を抱いたのが、本稿執筆のきっかけでした。




↓↓鉄道系ブログ・ニュースポータルサイト「鉄道コム」はこちらをクリック↓↓
鉄道コム