JR東日本では、鉄道事業に求められる役割やサービスが多様化・高度化するなか、今後の持続的な鉄道事業運営のために、去る2024年12月6日(金)に同社発足後初となる運賃改定を申請したことを発表しました。
運賃改定の申請について|JR東日本
概要は以下のとおりです。
詳細は、上記発表資料をご覧下さい。
物価高や人手不足、コロナ禍後の行動様式の変容などにより、鉄道事業を取り巻く環境が厳しさを増していることを背景に、ここ近年鉄道事業者の運賃改定(値上げ)のニュースが続いていますが、今回、JR東日本が、運賃改定(値上げ)の申請を行うことを発表しました。
JR東日本といえば、首都圏という国内最大の人口集積地域を抱える、国内最大の鉄道事業者といって過言ではないと思われますが、そんなJR東日本が値上げを行うほど経営が苦しいのか疑問に思う方もおられるかも知れません。
もっと言えば、「そんなわけ無いだろう」等、不審に思われる方もおられるかも知れません。
この点、鉄道運賃改定の根拠となる「総括原価」について、今年4月からその算定方法が見直され、この「総括原価」に3年を超える将来の減価償却費等の計上や、人件費の算定における伸び率の反映、災害復旧に伴う修繕費用の計上等、これまで「総括原価」の対象外であった費用も計上されるようになりました。
(参考)
報道発表資料:鉄道運賃水準の算定の根拠となる「総括原価」の算定方法を見直します<br>〜収入原価算定要領等の一部改正〜 - 国土交通省
この基準で今後3年間の収支を推定したところ、現行のままでは911億円の赤字(収支率95.5%)に対し、今回の申請により30億円の赤字(収支率99.8%)とほぼ収支均衡となることが示されています。
(なお、この基準は申請上の計算方法によるもののため、実際の収支とは違うことには注意)
ともあれ、現在のみならず将来の運営を見据えると、現在の運賃水準では収支均衡とならないことから、今回申請に至った、という理解になるかと思います。
その申請内容ですが、全般的に値上げ、というのが大きな点なのですが、個人的に着目している点を中心に分析してみます。
【山手線内・電車特定区間の運賃区分廃止(幹線への統合化)】
今回の申請では、主に山手線に設けられてた「山手線内」、及び都内とその近郊に設けられていた「電車特定区間」の運賃区分を廃止し、「幹線」区分に統合します。
似たような話は、JR西日本でも来年4月1日より「大阪環状線内」の区分を廃止して「電車特定区間」に統合することとしていますが、こちらは「電車特定区間」存続の上でエリアを拡大すること、そして全体として増収にならない想定としている点が、JR東日本の申請と異なる点といえます。
(参考)
今回の運賃区分の整理により、特に山手線内区間の上昇幅は大きく、例えば東京〜新宿間では現行210円(バリアフリー料金込み)のところが260円(いずれもきっぷの場合)と、20%以上の値上げとなり、影響を受ける利用者がかなり多いと考えられます。
区間によって異なる運賃区分の整理は、利用者や鉄道事業者は勿論、様々な事業所の会計担当者等、直接利用するわけではない人々にとっても分かりやすい運賃体系を実現することでメリットがあるので、恐らく目指す方向性は同じなのでしょう。
ただ、現在の「山手線内」から見れば、値上げ後の運賃が、運賃表の単位で二段階高くなる(山手線内⇒電車特定区間⇒幹線)ことになるため、負担感は決して少なくないのかな、と思います。
それだけに、値上げ申請後、運輸審議会における審議における様々な意見や、国土交通省において実施されるであろう「パブリックコメント」での国民からの意見に対し、真摯でかつ明確に答えていく必要があるのではないか、と思うところです。
【JR他社にまたがる際の運賃に「通算加算方式」を採用】
今回のJR東日本の値上げで、JR他社にまたがって利用する際の計算方法に「通算加算方式」を採用することとしています。
これまで、JR3社の幹線運賃は、共通の運賃表により計算することとし、JR北海道・JR四国・JR九州にまたがって利用する場合には、別途加算額を追加して合計額を計算することとしています。
今回の値上げでは、この加算運賃にJR東日本が加わった、ということになるというのが大まかな理解、といえるでしょう。
本州3社に比べ、北海道・四国・九州の「三島会社」は収益性が低く、早い時期からJR他社またがる運賃計算の際、加算運賃をプラスすることとしていました。
しかし今回、JR東日本がこの仲間に加わることになるため、時刻表の普通運賃の計算ページの記載も、更に複雑になるのかな、という気もします。
もっとも上述の、JR東日本エリアの「山手線内」「電車特定区間」廃止と併せると、シンプルとなるケースは多いのでしょうが、ともあれ運賃改定後の運賃表の記載がどうなるか、これまた改定時の時刻表を実際に手に取って確かめてみたいと思います。
【特定区間(東京地区)の見直し】
東京地区、名古屋地区、京阪神地区には、国鉄時代に他の鉄道事業者との競合区間に、通常よりも安い水準の運賃である「特定区間」が設定されました。
東京地区で言えば、品川〜横浜(京急)や新宿〜八王子(京王)、名古屋地区では名古屋〜岐阜(名鉄)、京阪神地区では大阪〜三ノ宮(阪急、阪神)等、多くの区間でみられます。
こういった競合関係は、そう簡単に変化しないものと勝手に考えていたところ、今回の改定にともない大きく見直しされることも発表され、個人的には驚きました。
廃止する理由としては、「路線形態の変化から直接競合関係とならない区間」「利用が少ない区間」等とされ、上記の18区間を廃止することとしていますが、それぞれの区間がどんな背景で廃止されることになるのか、少し推察してみました。
<渋谷〜桜木町>
恐らくこれが最も明確でありましょう。
国鉄時代には、競合となる東急東横線が渋谷〜横浜〜桜木町で営業しており、その競合対策として特定運賃が設けられたといえます。
しかし、東急東横線の横浜〜桜木町は廃止され、新設の「みなとみらい線」に代替となりました。
みなとみらい線は東横線とは別途、初乗り運賃が加算されることから、渋谷〜馬車道駅(桜木町駅に近接)で510円と、現状ではむしろJR東日本の方が割安となっています。
これこそが「路線形態の変化」の分かりやすい事例といえるでしょう。
<新橋〜田浦・横須賀・衣笠・久里浜、等>
次に横須賀線にからむ区間ですが、区間数でみると最も多く15区間あります。
いずれも京急との競合から設定された運賃といえるでしょうが、現在の特定運賃でもJRの方が高い水準となっており、引き続き競合していることから、これだけでは廃止する理由が薄いといえます。
恐らくですが、横須賀線では、逗子〜久里浜では列車本数が半減する上に、短い4両編成の折り返し列車が多数設定されていることからも分かるように、逗子を境に輸送量が大幅に減少していることから、競合となり得ないことが理由なのでは、と考えられます。
(上記の「利用者の少ない区間」に相当)
同じ横須賀線関係でも、品川〜逗子及び横浜〜逗子については、引き続き特定運賃が設定されていることから見ても、競合関係が現在も継続しているか否かで、特定区間の存廃を判断した感があります。
<上野・日暮里〜成田>
この区間では、常磐線・成田線と、京成電鉄が競合しています。
ただ、常磐線はともかく、成田線は30分間隔と、こちらもまた列車本数が多くない区間となっています。
一方、競合の京成も、昼間時間帯は途中の京成佐倉で乗り換えが必要な列車もあること、また、都営浅草線を経由して青砥から直通する列車も、国鉄時代に比べて大幅に整備されたことを総合的に考えると、「路線形態の変化」で「利用者が少なくなった」という、併せもった理由になるのかな、と想像できます。
以上のように、個別に分析すると、特定区間が廃止された理由が明確、あるいはぼんやりと見えてきたのかな、という印象です。
もっとも、京阪神地区でみると、そんな状況の変化は今のところ無さそうなのかな、という印象ですが…
【東京・熱海間の東海道新幹線と東海道本線(在来線)の別線化】
最後が、SNS上でも大きく話題になった(ような気がする)東京・熱海間の取り扱いです。
現在は、同一の路線として取り扱っているこの区間を、運賃改定後は別線とする、というのが趣旨です。
現在は新幹線・在来線ともに運賃は同額のため、乗車券の経由表記にかかわらず、新幹線・在来線どちらも利用可能ですが、運賃改定によりJR東日本とJR東海とで、運賃に差が生じることから、別の路線として扱うこととするものと考えられます。
同様の例としては、山陽新幹線の新下関〜博多間があるので、これ自体は特段目新しいものではありません。
(参考)
ただ今回は、東京〜熱海という利用者の多い区間での別線化であることから、大いに注目を集めたものといえます。
一方、現在設定されている往復乗車券では、新下関〜博多間については、新幹線・在来線区間を往復別々に利用した場合でも、往復割引の適用としています。
仮に今回のJR東日本の運賃改定後も、往復乗車券を残存させると
などが容易に想定されることから、今回の運賃改定に先んじて、下記の「往復乗車券の廃止」が発表された、とも考えられるかも知れません。
(参考)
こう書くと「専ら鉄道事業者の勝手な都合でしょ?」という文句も出てきそうですが、一方で国鉄時代に作り上げられた制度が、6つの事業者に分割され、分割された事業者のそれぞれの事情が30年以上経過して違ってくる中で、同一の制度をいつまでの維持していることが、それこそ制度疲労を起こしている、とは個人的にも感じるところです。
こういった「制度疲労」を解消するのには、勿論既存の制度を活用して既得権益を得ている利用者からの反発もあるでしょうが、一方で持続的な鉄道運営には障害になる、というのも個人的には一定理解はできるところです。
こちらについても、上述の繰り返しとなりますが、運賃改定の申請から認可、そして実施にかかるプロセスの中で、丁寧な説明が必要なのではないか、と思うところです。
以上、本当に長々と記してしまいましたが、運賃値上げのみならず、国鉄時代から引き継がれてきた制度がこれを機に見直されることから、色々と思うところを記してみました。
JR東日本にとって「運賃制度の大改革」ともいえる今回の改定申請。
今後どのような意見がどういった主体から示され、そしてどのような議論をもとに、どのような運賃制度が施行されるのか、注目していきたいと思っています。
運賃改定の申請について|JR東日本
概要は以下のとおりです。
【運賃改定実施予定日】
2026年3月
【改定の方向性】
●「わかりやすい運賃体系」の実現
「電車特定区間」「山手線内」運賃区分を「幹線」に統合
普通旅客運賃を「IC≦きっぷ」(小児の一部を除く)に改定
●全エリアの運賃を改定(値上げ)
●通学定期旅客運賃は家計負担に配慮
「幹線」「地方交通線」の通学定期旅客運賃を据え置き
【改定率】
普通運賃7.8%、通勤定期12.0%、通学定期4.9%
【その他】
・特定区間(東京地区)の普通旅客運賃及び定期旅客運賃は、一部を除き廃止
・東京・熱海間の東海道新幹線(JR東海)と東海道線(JR東日本)の同一路線での取り扱いを廃止
・鉄道駅バリアフリー料金を廃止
・オフピーク定期券は、運賃改定後も利用可能範囲を拡大して設定予定
【主な区間の運賃比較】
(上記発表資料(https://www.jreast.co.jp/press/2024/20241206_ho02.pdf)より引用)
詳細は、上記発表資料をご覧下さい。
物価高や人手不足、コロナ禍後の行動様式の変容などにより、鉄道事業を取り巻く環境が厳しさを増していることを背景に、ここ近年鉄道事業者の運賃改定(値上げ)のニュースが続いていますが、今回、JR東日本が、運賃改定(値上げ)の申請を行うことを発表しました。
JR東日本といえば、首都圏という国内最大の人口集積地域を抱える、国内最大の鉄道事業者といって過言ではないと思われますが、そんなJR東日本が値上げを行うほど経営が苦しいのか疑問に思う方もおられるかも知れません。
もっと言えば、「そんなわけ無いだろう」等、不審に思われる方もおられるかも知れません。
この点、鉄道運賃改定の根拠となる「総括原価」について、今年4月からその算定方法が見直され、この「総括原価」に3年を超える将来の減価償却費等の計上や、人件費の算定における伸び率の反映、災害復旧に伴う修繕費用の計上等、これまで「総括原価」の対象外であった費用も計上されるようになりました。
(参考)
報道発表資料:鉄道運賃水準の算定の根拠となる「総括原価」の算定方法を見直します<br>〜収入原価算定要領等の一部改正〜 - 国土交通省
この基準で今後3年間の収支を推定したところ、現行のままでは911億円の赤字(収支率95.5%)に対し、今回の申請により30億円の赤字(収支率99.8%)とほぼ収支均衡となることが示されています。
(なお、この基準は申請上の計算方法によるもののため、実際の収支とは違うことには注意)
ともあれ、現在のみならず将来の運営を見据えると、現在の運賃水準では収支均衡とならないことから、今回申請に至った、という理解になるかと思います。
その申請内容ですが、全般的に値上げ、というのが大きな点なのですが、個人的に着目している点を中心に分析してみます。
【山手線内・電車特定区間の運賃区分廃止(幹線への統合化)】
今回の申請では、主に山手線に設けられてた「山手線内」、及び都内とその近郊に設けられていた「電車特定区間」の運賃区分を廃止し、「幹線」区分に統合します。
似たような話は、JR西日本でも来年4月1日より「大阪環状線内」の区分を廃止して「電車特定区間」に統合することとしていますが、こちらは「電車特定区間」存続の上でエリアを拡大すること、そして全体として増収にならない想定としている点が、JR東日本の申請と異なる点といえます。
(参考)
今回の運賃区分の整理により、特に山手線内区間の上昇幅は大きく、例えば東京〜新宿間では現行210円(バリアフリー料金込み)のところが260円(いずれもきっぷの場合)と、20%以上の値上げとなり、影響を受ける利用者がかなり多いと考えられます。
区間によって異なる運賃区分の整理は、利用者や鉄道事業者は勿論、様々な事業所の会計担当者等、直接利用するわけではない人々にとっても分かりやすい運賃体系を実現することでメリットがあるので、恐らく目指す方向性は同じなのでしょう。
ただ、現在の「山手線内」から見れば、値上げ後の運賃が、運賃表の単位で二段階高くなる(山手線内⇒電車特定区間⇒幹線)ことになるため、負担感は決して少なくないのかな、と思います。
それだけに、値上げ申請後、運輸審議会における審議における様々な意見や、国土交通省において実施されるであろう「パブリックコメント」での国民からの意見に対し、真摯でかつ明確に答えていく必要があるのではないか、と思うところです。
【JR他社にまたがる際の運賃に「通算加算方式」を採用】
今回のJR東日本の値上げで、JR他社にまたがって利用する際の計算方法に「通算加算方式」を採用することとしています。
(上記発表資料(https://www.jreast.co.jp/press/2024/20241206_ho02.pdf)より引用)
これまで、JR3社の幹線運賃は、共通の運賃表により計算することとし、JR北海道・JR四国・JR九州にまたがって利用する場合には、別途加算額を追加して合計額を計算することとしています。
今回の値上げでは、この加算運賃にJR東日本が加わった、ということになるというのが大まかな理解、といえるでしょう。
本州3社に比べ、北海道・四国・九州の「三島会社」は収益性が低く、早い時期からJR他社またがる運賃計算の際、加算運賃をプラスすることとしていました。
しかし今回、JR東日本がこの仲間に加わることになるため、時刻表の普通運賃の計算ページの記載も、更に複雑になるのかな、という気もします。
もっとも上述の、JR東日本エリアの「山手線内」「電車特定区間」廃止と併せると、シンプルとなるケースは多いのでしょうが、ともあれ運賃改定後の運賃表の記載がどうなるか、これまた改定時の時刻表を実際に手に取って確かめてみたいと思います。
【特定区間(東京地区)の見直し】
東京地区、名古屋地区、京阪神地区には、国鉄時代に他の鉄道事業者との競合区間に、通常よりも安い水準の運賃である「特定区間」が設定されました。
東京地区で言えば、品川〜横浜(京急)や新宿〜八王子(京王)、名古屋地区では名古屋〜岐阜(名鉄)、京阪神地区では大阪〜三ノ宮(阪急、阪神)等、多くの区間でみられます。
こういった競合関係は、そう簡単に変化しないものと勝手に考えていたところ、今回の改定にともない大きく見直しされることも発表され、個人的には驚きました。
(上記発表資料(https://www.jreast.co.jp/press/2024/20241206_ho02.pdf)より引用
廃止する理由としては、「路線形態の変化から直接競合関係とならない区間」「利用が少ない区間」等とされ、上記の18区間を廃止することとしていますが、それぞれの区間がどんな背景で廃止されることになるのか、少し推察してみました。
<渋谷〜桜木町>
恐らくこれが最も明確でありましょう。
国鉄時代には、競合となる東急東横線が渋谷〜横浜〜桜木町で営業しており、その競合対策として特定運賃が設けられたといえます。
しかし、東急東横線の横浜〜桜木町は廃止され、新設の「みなとみらい線」に代替となりました。
みなとみらい線は東横線とは別途、初乗り運賃が加算されることから、渋谷〜馬車道駅(桜木町駅に近接)で510円と、現状ではむしろJR東日本の方が割安となっています。
これこそが「路線形態の変化」の分かりやすい事例といえるでしょう。
<新橋〜田浦・横須賀・衣笠・久里浜、等>
次に横須賀線にからむ区間ですが、区間数でみると最も多く15区間あります。
いずれも京急との競合から設定された運賃といえるでしょうが、現在の特定運賃でもJRの方が高い水準となっており、引き続き競合していることから、これだけでは廃止する理由が薄いといえます。
恐らくですが、横須賀線では、逗子〜久里浜では列車本数が半減する上に、短い4両編成の折り返し列車が多数設定されていることからも分かるように、逗子を境に輸送量が大幅に減少していることから、競合となり得ないことが理由なのでは、と考えられます。
(上記の「利用者の少ない区間」に相当)
同じ横須賀線関係でも、品川〜逗子及び横浜〜逗子については、引き続き特定運賃が設定されていることから見ても、競合関係が現在も継続しているか否かで、特定区間の存廃を判断した感があります。
<上野・日暮里〜成田>
この区間では、常磐線・成田線と、京成電鉄が競合しています。
ただ、常磐線はともかく、成田線は30分間隔と、こちらもまた列車本数が多くない区間となっています。
一方、競合の京成も、昼間時間帯は途中の京成佐倉で乗り換えが必要な列車もあること、また、都営浅草線を経由して青砥から直通する列車も、国鉄時代に比べて大幅に整備されたことを総合的に考えると、「路線形態の変化」で「利用者が少なくなった」という、併せもった理由になるのかな、と想像できます。
以上のように、個別に分析すると、特定区間が廃止された理由が明確、あるいはぼんやりと見えてきたのかな、という印象です。
もっとも、京阪神地区でみると、そんな状況の変化は今のところ無さそうなのかな、という印象ですが…
【東京・熱海間の東海道新幹線と東海道本線(在来線)の別線化】
最後が、SNS上でも大きく話題になった(ような気がする)東京・熱海間の取り扱いです。
現在は、同一の路線として取り扱っているこの区間を、運賃改定後は別線とする、というのが趣旨です。
(上記発表資料(https://www.jreast.co.jp/press/2024/20241206_ho02.pdf)より引用
現在は新幹線・在来線ともに運賃は同額のため、乗車券の経由表記にかかわらず、新幹線・在来線どちらも利用可能ですが、運賃改定によりJR東日本とJR東海とで、運賃に差が生じることから、別の路線として扱うこととするものと考えられます。
同様の例としては、山陽新幹線の新下関〜博多間があるので、これ自体は特段目新しいものではありません。
(参考)
ただ今回は、東京〜熱海という利用者の多い区間での別線化であることから、大いに注目を集めたものといえます。
一方、現在設定されている往復乗車券では、新下関〜博多間については、新幹線・在来線区間を往復別々に利用した場合でも、往復割引の適用としています。
仮に今回のJR東日本の運賃改定後も、往復乗車券を残存させると
・東京〜熱海間を含める往復乗車券を発売する際には、必ず経路の確認が必要なこと
・同区間を含む経路において往復割引が適用となると、往復別の運賃計算を行う特例を適用するケースが格段に増加すること
・上記の確認事項の増加により、利用者や現場の混乱が予想されること
などが容易に想定されることから、今回の運賃改定に先んじて、下記の「往復乗車券の廃止」が発表された、とも考えられるかも知れません。
(参考)
こう書くと「専ら鉄道事業者の勝手な都合でしょ?」という文句も出てきそうですが、一方で国鉄時代に作り上げられた制度が、6つの事業者に分割され、分割された事業者のそれぞれの事情が30年以上経過して違ってくる中で、同一の制度をいつまでの維持していることが、それこそ制度疲労を起こしている、とは個人的にも感じるところです。
こういった「制度疲労」を解消するのには、勿論既存の制度を活用して既得権益を得ている利用者からの反発もあるでしょうが、一方で持続的な鉄道運営には障害になる、というのも個人的には一定理解はできるところです。
こちらについても、上述の繰り返しとなりますが、運賃改定の申請から認可、そして実施にかかるプロセスの中で、丁寧な説明が必要なのではないか、と思うところです。
以上、本当に長々と記してしまいましたが、運賃値上げのみならず、国鉄時代から引き継がれてきた制度がこれを機に見直されることから、色々と思うところを記してみました。
JR東日本にとって「運賃制度の大改革」ともいえる今回の改定申請。
今後どのような意見がどういった主体から示され、そしてどのような議論をもとに、どのような運賃制度が施行されるのか、注目していきたいと思っています。
▲JR中央線快速電車のE233系。
中央線快速電車の関連では、東京〜新宿間が210円から260円に値上げされる一方、新宿〜八王子・高尾に設定されている「特定運賃」は継続されることとなっています。